ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

  左舷、目の前の宇宙空間に巨大な鉄の塊が浮いていた。

数人の宇宙服姿の人間が取り付いて何か作業をしていた。

「何処に曳航してゆくんでしょうね。」 それを見詰めながら、副長が艦長に尋ねた。

応えは無かった。

副長は古代守の方を向いた。

古代はその鉄の塊に敬礼していた。

「艦長・・・。」

「あ、すまん。 あれはドイツの装甲艦だったからな~っ。 解体するスクラップ屋は苦労するぞ。」
古代守は副長の方に向き直って言った。

彼等は第36輸送船団を護送して木星宙域に差し掛かろうとしていた。

この宙域では3日前、ドイツ船団がガミラス艦隊に襲われ、全滅したのだ。

ガミラス艦隊はワープが出来る利点を生かした一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦法を多用する様に戦術を変えて来ていた。

装甲艦ヘッセンとその配下のZ級駆逐宇宙艦2隻はその攻撃に4日間耐えたが徐々に駆逐宇宙艦を失い、
最後の2日はヘッセン1隻で奮闘したが、何十箇所もガミラス重巡の大口径フェーザー砲に撃ちぬかれ、
とうとう沈黙した。

しかし、流石にドイツの装甲艦、元がどんな形だったか、わからない位にダメージを受けても爆発する事は
無かった。

「シャルンホルスト」クラスの装甲艦とは構造が違って艦体を満遍なく装甲する方式だったので1枚当たりの
装甲板厚は薄かったが、それが何層にも重なる構造は非常に頑強でガミラス艦の執拗な攻撃にも致命的な
ダメージを受けるまでにかなりの時間が掛った。

<苦しかったろう・・・。>古代はその間の「ヘッセン」の艦長を始め、乗組員達の苦闘を思って心の中で涙した。

古代は自分が護衛している第36輸送船団に目をやった。

今回の護衛は艦隊型駆逐宇宙艦「かげろう」型が4隻、突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」型が4隻と変則的だった。

「かげろう」型は艦隊に編入され、宙雷戦隊を構成したり、主力艦を防衛したりするのが目的の
艦隊型駆逐宇宙艦だ。
e0266858_6123828.jpg

艦体中央に反物性ミサイルの垂直発射管(VLS)を18門攻撃兵装とし、2連双5インチレーザー砲塔を3基を
ミサイル防衛用に持っている、そして、今は艦体両側に翼の様なパイロンを張り出し、片側3基、合計6基の
反物性ミサイルを追加装備ていた。

これは、本来の駆逐宇宙艦の主流をなす姿だと言えた。

それに対し、「ゆきかぜ」型は今までになかった突撃駆逐宇宙艦という分類だった。

e0266858_91227.jpg


「かげろう」型より一回り小さい艦体で進行方向にミサイルを発射する、艦艇というより、航空機型の戦闘方式を
とる新型艦だ。

光速兵器も5インチと小ぶりではあるが、一応、3連双フェーザー砲等を2基持っている。

ミサイル発射管は3基と少ないが、次発装填が可能なので連射が効く、また、主攻撃兵装は反物性ミサイル
だったが、他にも目的別に幾種類かのミサイルを積んでいた。

この突撃駆逐宇宙艦という艦種は元々は艦隊戦を目的に開発されたものではなかった。

小型で運動性が高く、防御兵装は最低限、攻撃兵装に重点を置いたその設計は実は遊星爆弾迎撃システムに
組み込まれる事を前提に設計されていた。

そして構造が簡易なため今までの艦隊型駆逐宇宙艦よりも量産が効くという利点もあった。

だが、問題だったのは今までの艦隊型駆逐宇宙艦が旧式化して退役したり、ガミラスとの戦いで損耗した
場合、新たな艦隊型駆逐宇宙艦を設計、配備するだけの余裕はもはや地球側には無かった事だ。

否が応でも新種の突撃駆逐宇宙艦で全ての任務を賄わなければならないのだ。

遊星爆弾の迎撃はもともと建造目的がそれなのだから運用に問題はなかった。

艦隊に配備され、今までの艦隊型駆逐宇宙艦と同じ様な使い方、すなわち主力艦を守って防御弾幕を張る
護衛艦の役割、敵艦隊近傍まで接近してミサイルを放って攻撃する宙雷戦隊の役割、をするのも問題なく
こなせると思われた。

一番、憂慮されたのが船団護衛の任務だった。

艦隊型駆逐宇宙艦は非常に大雑把に言ってミサイル・キャリアーである。

自らは余り、運動せず、発射したミサイルに運動させ、敵を追いかけさせる、また、船団に接近する
敵のミサイルはレーザーで迎撃する、そうした艦艇運用型のコンセプトで設計されていた。

それに引き換え、突撃駆逐宇宙艦は航空機、それも大型の戦闘機としてのコンセプトで設計されていた。

小さい艦体に多くのミサイルを積むためにミサイルの航続距離を少なくして小型化し、その運動性の少なさを
艦自体の運動性で補う考え方だった。

当然、推進剤やエネルギー消費は艦隊型駆逐宇宙艦より多くなると推定された。

まともに戦っていては直ぐに推進剤切れで戦闘出来なくなり、ガミラス艦隊の餌食になるのは目に見えていた。

地球ー木星間の通商路は日本にとっても生命線である。

何んとしてでも、突撃駆逐宇宙艦の有効な運用方法を確立する必要があった。

幾つかの案が浮上しては消えていった。

そしてある程度、煮詰まった案が出来、今回、第36船団の護衛に通常の艦隊型駆逐宇宙艦4隻に加えて
突撃型駆逐宇宙艦4隻を余分につけて実戦評価する事になったのである。

古代守の指揮する「ゆきかぜ」以下、「みねかぜ」、「うみかぜ」、「かわかぜ」の4隻は新戦法の訓練を積んで
初実戦に望むのである。

「艦長、早く腕試しをしたい・・・と言いたい所ですが、相手がガミラスじゃ遠慮しておきたいですね。」副長が
守に話かけた。

「そうでもないさ。 オキタ・フォーメーションやネルソン・タッチは俺たちが迅速に行動して戦闘の主導権を
握れば戦いを有利に進める事が出来る。 今までの訓練結果にもっと自信を持てよ。」守は部下の不安を
打ち消してやった。

しかし、彼自身はガミラス艦のワープ能力が戦闘にどの様に影響するか、一抹の不安をいだいていた。

**********************************************

 突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」のブリッジで古代守は一人緊張した面持ちでスクリーンを見詰めていた。

そこには接近してくるガミラスの重巡2隻の姿が映っていた。

列車の様に繋がったタンカーを護衛して木星に達する寸前の所でガミラス通商破壊用重巡艦隊に発見されて
しまったのである。

<エネルギーがギリギリしか無い!>

木星のプラントで水素やメタンを受け取った後なら充分、太刀打ち出来るのだが・・・

「悪い時に来てくれた・・・。」内心、最悪の結末を想像している自分に気が付いた。

副長の方を見ると心配そうに彼はこちらを見ていた。

部下を不安がらせてはいけない! 彼はおもむろに命令を発した。

「ゆきかぜ 以下突撃駆逐艦4隻はガミラス艦の迎撃に向かう

陣形は鶴翼! 戦術はA!「かげろう」以下艦隊型駆逐艦4隻はタンカーの護衛に専念しろ!」

「了解!」操舵手は命令一下、「ゆきかぜ」の艦首をガミラス艦の方に向け、突撃を開始した。

「ネルソン・タッチで行きます!」射撃管制官が叫んだ。

ネルソン・タッチとは19世紀英国の名提督ネルソンが多用した戦術である。

単縦陣、縦に繋がって横腹を見せている敵艦隊に対し、風上から一直線に突撃し、相手の単縦陣を横切る時
こちらの左右の全砲門を開いて左右の敵艦に至近距離から弾雨を浴びせて仕留める戦法の事だ。

突撃中は敵艦隊の砲の数が圧倒的に勝っており、撃たれっぱなしの危険な状態になる様に思われるが、
こちらは突撃中で前面を相手に見せており、目標としては小さくなったのと同じ効果があるのだ。

しかも、当時の射撃指揮は稚拙で砲手に任されており、波浪のある海上では距離が開くとたちまち命中率が
下がったのである。
 
ネルソン自身も長距離射撃は当たらないと言って嫌っており、舷々合い摩する距離に接近するまで発砲
させなかった。

 こんな旧式な戦法をどうして地球軍は採用したのであろうか?

ガミラス艦はどうした訳か主砲を前方に撃てないのだ。

必ず、艦首を振って単縦陣で斜めに突撃してくる。

古代はこの2隻の間を目がけて艦隊を突撃させた。

「ゆきかぜ」型のフェーザー砲ではガミラスの重巡の装甲には歯がたたない。

艦首から発射する反物性ミサイルが頼りだ。

しかし、至近距離からの射撃なら別だ。

しかも後部の噴射口内部にビームをぶち込まれたら、流石のガミラス重巡もひとたまりも無い。

「ゆきかぜ」と「かわかぜ」を先頭に鳥が翼を広げた様に拡がった地球艦隊は反物性ミサイルを発射しつつ、猛烈な速度で近づく。

ミサイルの第一射目は敵のフェーザー砲で迎撃された。

猛烈な爆煙が辺りを覆った。

フレアとチャフが詰められたダミーだったのだ。

ガミラスも地球艦隊も相手を見失う。

しかし、古代守はニヤリと笑った。

『戦術Aクイック発動!」命令一下、地球艦隊は二たてに別れ、二隻一組の単縦陣に移行した

そして何のためらいも無く、爆煙の中に突っ込んだ。

「ゆきかぜ」の左舷にいきなり先頭のガミラス重巡の噴射口が現れた。

敵艦隊の分断に成功したのだ。

射手が反射的にビーム砲の引き金を引いた。

6条のビームがその噴射口に吸い込まれたと思ったら「ゆきかぜ」は忽ちガミラス艦隊を横切った。

続いて僚艦の「うみかぜ」もフェーザーを叩き込んで通りすぎた。

後続のガミラス艦も「みねかぜ」、「かわかぜ」の攻撃を受けていた。

先頭のガミラス艦が小爆発を起こしたがその姿がユラリと歪んだと思ったらその姿は消えた。

「ワープしたな。」古代守は唇を噛んだ。

後続のガミラス艦はやはりワープしようとしたがユラリと歪んだと思ったと同時に大爆発を起こして宇宙のチリと
なった。

たぶん一隻目もワープ中の亜空間内か、通常空間に戻った時に爆沈するだろうと思われた。

もし、生還したとしても修理に時間を取られるだろう。

一応、古代守の護衛の任務は果たせたと言えた。

しかし、これでエネルギーを使い切ってしまった艦隊は木星軌道上を漂流する羽目になってしまった。

「こんな時に別のガミラス艦隊がやって来たら一巻の終わりですね。艦長。」副長がコーヒーを手渡しながら
古代守に言った。

「それはそれ、運命さ、しかし、俺は『ゆきかぜ』の幸運伝説を信じるよ。」守には「ゆきかぜ」の運の良さに
自信があったのだ。

「『雪風』は第2次大戦中に活躍した『陽炎』型駆逐艦の一隻である。

この艦は殆ど全ての海戦に参加したにも係わらず、戦死者3名と言う幸運艦なのだ。

ある時など海戦後食料倉庫の中から米軍機の発射した5インチロケット弾が発見された事が、あった。

そして、その隣りは火薬庫だったのである。

もし、ロケット弾が食料で受け止められずに火薬庫に飛び込んでいたら爆沈は免れなかったろう。

 日本の敗戦後、「雪風」は中華民国の「丹陽」として再び弾雨の中にいたが幸運はまだまだ続いていた。

中華人民共和国の駆逐艦隊に追われた時、あまりの酷使に機関が故障を起こして動けなくなってしまった。

もうだめだ!艦長以下全乗組員がそう思った時、追撃して来た敵の駆逐艦が次々と爆発を起こしたのである。 

やはり、機関の酷使が原因のボイラー爆発であった。 

それも三隻全てがである。 

これはもう何か特別な力が働いているとしか思えなかったのである。

駆逐宇宙艦になってからも幸運は続いていた。

だから古代は落ち着いていられたのである。

根拠の全くない自信であったが、明日をもしれない任務に明け暮れる駆逐艦乗りには必要な心の拠り所だった
と言える。

数隻の作業艇が近づいて来た。 

エネルギー補給のためである。

突撃駆逐宇宙艦隊はプラントに戻れるだけの最低量のエネルギーを貰い、プラントで完全補給した後、
今度は満載のタンカー船団を護衛して地球に戻るのだ。

日本プラントに着くと古代守は「かげろう」型の艦隊が先に入港しているのを確認した。

よかった。あれ以上のガミラス艦はいなかった様だ。

「かげろう」のパイロンに吊るされた反物性ミサイルの数は揃っており、使われた様子は無かったからだ。

「ゆきかぜ」型より大分古い「かげろう」型はフェーザー砲すら持たず、攻撃手段は反物性ミサイルだけだ。

砲塔は二連双レーザー砲を三基持っていたが、これらは対ミサイル防衛用で出力も少なく、もし、「ゆきかぜ」型の留守に船団が別のガミラス艦隊に襲われたら苦戦は免れなかったろう。

 とにかく、船団が水素とメタンで腹を満たす間、半舷上陸だ。

護衛艦隊司令、古代守大尉は自分も腹を満たすべく、ケータリングに向かっていった。



 地球ー木星間航路でのガミラス艦隊の跳梁激しさを増す、地球軍かなり苦戦を強いられる。

                                                    ヤマト発進まで2026日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-13 21:00 | 本文 | Comments(2)
2012/09/09 図版交換

 廊下の突き当たりに木製の重々しい立派な扉があった。

ライニック姉妹はその前で止まり、扉をノックすると中から入室を促す声がした。

フローラーは入室すると海軍式の敬礼をし、出頭を申告した。

「シェーア大将、フローラー・ライニック少佐、フレイア・ライニック大尉出頭しました。」

「うむ、木星航路の防衛戦、良い働きをしてくれているな。 感謝する。」シェーア大将は微笑んで椅子を勧めた。

「ガミラスの攻撃は執拗を極めてきています。

こちらも重巡クラス以上の艦を投入しないと対処しきれません。」フローラーは前から思っていた事を
シェーア大将に告げた。

「今、我が艦隊には重巡は『プリンツ・オイゲン』と『ブリュッヒャー』しかない、通商保護には出せんな。 
艦隊の方が手薄になってしまう。」 シェーアはにべも無くフローラーの意見を却下した。

「艦隊保全策を取って成功した例はないぜ! 折角、持っているものは使わなきゃ価値がないよ!」フレイアも
噛み付いた。

確かに日露戦争時の旅順艦隊、第1次大戦の帝政ドイツ高海艦隊、第2次大戦の日本の戦艦部隊等、
ただ悪戯に引きこもって自滅した艦隊の例は多い。

海軍は陸軍と違って艦艇という設備がなければ戦い様がない。

そのため、手持ちの戦力(設備)をなるべく傷付け無い様に戦いを進めたがる傾向がある。

その極端な例が艦艇を軍港の奥から出撃させない艦隊保全策である。

しかし、戦う為の兵器である軍艦を戦闘に参加させないのは矛盾を通り越して無駄以外の何物でもない。

この辺りの事をきちんと理解していたのは海賊帝国と呼ばれた英国、幾ら艦艇が沈められてもそれを補える
工業力を持っていた米国、自らの2倍の戦力と対峙せざるを得なかった明治時代の日本帝国海軍位であった。

シェーア大将は艦隊の耳目となる重巡を艦隊から外してしまうと後にガミラスが木星圏侵攻をして来た時、
それを迎撃するのに支障があると考えていたのである。

「今回、君達を呼んだのはこんな事を議論するためではない。 新しい辞令だ。 受け取りたまえ。」シェーアは
2通の封筒を2人に渡した。

「フローラー・ライニック少佐、少佐を免じ ・・・大佐に任じる!」フローラーは驚いた。

「俺は中佐だぜ!」大尉のフレイアも驚きを隠せなかった。

「二階級特進・・・ですか? これは一体・・・。」 ライニック姉妹の驚きも無理は無かった。

二階級特進は普通、戦死した時のみ、その功績を称えて行われる処置だったからである。

「二階級特進は何も戦死した時のみに限った事ではない。 まぁ極めて稀な事には違いないがな。」シェーアは
悪戯っぽく笑った。

「来たまえ。 君達に見せたい物がある。」シェーアはライニック姉妹を奥の部屋に誘った。

**********************************************

 フローラーの目の前のモニターには土星の輪がまるで氷原の様に広がっていた。

<全く、シェーアのオヤジも無茶言ってくれるよなーっ>例によってフレイアが無言でぼやいた。

<そうでも無いわよ。 私達は護衛の巡航艦を引き付けておけば良いだけよ。 何も全部、撃沈する必要は
無いわ。>

<今までのガミラス艦隊はどの艦隊も全滅するまで喰らい付いてきたぜ。 それに今の護衛は
巡航艦だけど、戦いが長引けばその内、戦艦が出て来るかもしれない・・・。 いや、きっと出て来る。>

<その時はその時、今は今の事を考えましょう。>フローラーは意外と落ち着いていた。

今、ライニック姉妹は重巡航艦に乗って土星空域にいた。

フローラーは「シャルンホルスト」、フレイアは「グナイゼナウ」の艦長に任命されていたのだ。

しかもこの2隻は曰く付きの重巡だった。

と言うより、この2隻は今の区分こそ重巡航艦だったが本当の建造目的は通商破壊用装甲艦だったのだ。

2168年、欧州連合の重要な構成国だったドイツ連邦は政権をネオ・ナチスに奪われ、欧州連邦を脱退した
歴史を持つ。

そして周り中を敵に廻したドイツは自国の独立を守るためと称して軍拡を進めた。

しかし、ドイツ宇宙軍、いや海軍は歴史的伝統的に対立する国と力で決戦する事は極力避ける方針だった。

それが艦隊保全主義に繋がり、水兵の反乱を招いて帝政ドイツは崩壊したのだが、それとは別に独特の戦略を
持っていた。

第1次、第2次大戦共にドイツの主な敵対国は英国だった。

そして英国は戦争遂行に必要な物資を海外からの輸入に頼っていた。

すなわち、物資を運んでくる船を英国に辿り着かせなければ、その内、英国は干上がって戦争遂行は
覚束なくなる。

そのためにドイツは多数の潜水艦や水上艦を通商破壊の目的で七つの海に放ったのだ。

結局はドイツは英国に敗北したが後一歩で滅亡させると言う所まで追い詰めたのだ。

2169年代のネオ・ナチス政権も直接的に自国や自国プラントを防衛する宇宙艦隊は最小限度にし、代わりに
木星ー地球間の航路を狙う通商破壊艦を多数建造した。

これはドイツと対立する国には恐るべき脅威となった。

戦艦に砲力は劣る、速力は巡航艦と同等か少し下回る位のつまらない船という見方も出来る。

しかし、実際には自分に追いつけるどんな艦よりも強く、自分より強いどんな艦よりも速い、という敵に廻すには
真にやっかいな存在だったのだ。

ドイツは最初15インチ・フェーザー3連双砲塔を2基持ち、速度を戦艦より速く、巡航艦よりは遅くした
「ドイッチェ・ランド」クラスの装甲艦を装備したが外国の新型戦艦の速度が高めに設定されると旧式化し、
新型艦の出現が待たれた。

そして満を持して出現したのが「シャルンホルスト」クラスの通商破壊艦だった。

しかし、「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」が完成したところでネオ・ナチス政権は倒れ、ドイツは欧州連合に
復帰した。(2171年)

新生ドイツは欧州連合の1員に帰り咲くに当たり、ネオ・ナチス時代の悪夢の象徴として多数の通商破壊艦の
廃棄を決め、これらの艦艇は全てスクラップにされたはずだった。

少なくとも表向きは・・・。

**********************************************

 フローラーは土星の輪に艦を潜ませながらガミラスのエネルギー・資源運搬タンカーの船団を待ち伏せていた。

土星会戦の時に観測された土星上空に建設中と思しき施設が後の人工惑星のフライ・バイ偵察で
エネルギー採取プラントだと判明した時、ガミラスが何故、地球文明の急所というべき木星のプラント群を
直ぐに攻撃せず、木星ー地球航路の通商破壊に力を注いでいるか、判ったのだ。

彼等は自分達の攻撃準備が整うまでの間、地球陣営の体力を極力奪う方針なのだ。

遊星爆弾による示威攻撃もその一環と思われた。

あれ以来、一個の遊星爆弾も観測されなかったが地球陣営としては警戒を緩めるわけにはいかず、この警戒、
迎撃準備態勢を維持するだけで地球側の体力は相当奪われる事になった。

ガミラスの方針が予想出来た以上、その計画は断固、阻止する必要があった。

それはガミラスが地球陣営に対して仕掛けてきている攻撃、通商破壊工作をそっくり、そのまま仕掛け返す事
だった。

しかし、今の地球陣営には冥王星まで足を伸ばして通商破壊工作を行える艦艇は無かった。

但し、ネオ・ナチス時代のドイツが建造した各種の通商破壊艦ならば冥王星は無理としても土星までならば
長期通商破壊工作活動が出来る事が判っていた。

しかし、その各種通商破壊艦は既に廃艦となり、スクラップ化されていたはずだった。

だが、実際は月面の裏にあった廃艦駐機場でスクラップにされる順番を待っている状態だった。

ドイツ艦は堅牢な造りが解体業者に嫌われ、そのほとんど全部、スクラップ化が後回しになっていたのだ。

欧州連合の宇宙軍はすぐさま解体業者から通商破壊艦郡を買い戻し、整備の上、再度、任務に付ける事に
なった。

フローラーが少佐から大佐、フレイアが大尉から中佐と2階級特進したのも重巡航艦以上の艦艇の艦長は
大佐がなる慣例になっていたからであった。

フレイアが中佐で艦長を務めるのは特例事項でフローラーが指揮する第1特務艦隊の2番艦、
「グナイゼナウ」の艦長であると言う事を考慮した結果だった。
(まさか3階級特進という超特例はつくる訳には行かなかった。)

<2階級特進させたって言う事は戦死するまで帰ってくるなって事かな・・・。>フレイアがポツリと言った。

<私達はまだ良いわよ。 次にくる第2特務戦隊は船も乗組員も新品よ。 まともに戦えるかどうか心配だわ。>

「シャルンホルスト」クラスは通商破壊艦として非常に勝れた設計であった。

そこでその設計を殆ど流用して更に2隻の通商破壊艦が造られていた。

「デアフリンガー」と「リュッツオー」である。

この2隻はネオ・ナチス時代に起工されたが進宙式を迎えた所で廃艦が決まり、武装などの艤装が
施されないまま、廃艦駐機場に放置されていた。

スクラップ業者は「デアフリンガー」の解体を始めたがそのあまりにも頑強で複雑な構造に手を焼き、解体を
中止、他のドイツ通商破壊艦の解体も他国のやり易い物件から片付けて、先延ばしにしていた。

ガミラスの侵攻が異星文明の侵略だとはっきりした時点で欧州連合は過去に廃棄した艦艇でまだ解体されて
いない、ないしは戦闘可能なまでに復帰出来る艦艇を求めて廃艦駐機場に調査官を派遣した。

その結果、ドイツが廃棄したはずの通商破壊艦、装甲艦4隻、重巡4隻、軽巡8隻を発見したのである。

欧州連合の艦隊上層部はすぐさまこれ等の艦の買戻しと復元を決め、一大戦力を手にした。

装甲艦4隻は武装は強力だったが、速度が遅く、航続距離も劣るため、地球ー木星航路の防衛に廻し、
重巡2隻と軽巡4隻で1戦隊を組み、ガミラスの土星ー冥王星航路を襲う事になった。

その第1陣がライニック姉妹の指揮する第1特務戦隊であった。

その内訳は重巡は「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」の2隻、軽巡は「「ゼーアドラー」、「エムデン」、
「ケーニヒスベルク」、「フランクフルト」の4隻である。
e0266858_10214253.jpg

e0266858_10222351.jpg

ガミラスは土星以外にもエネルギー・プラントを保有している可能性はあったが、今の所の人工惑星による
戦略偵察では確認出来なかった。

もし、天王星や海王星にプラントを作られていたら地球艦隊には手も足も出ない、遠すぎるのである。

元々、ガミラスは初期には天王星からエネルギーを得るプラントを持っていたが、土星圏の制圧に成功すると
そのプラントをそっくり引き上げ、土星プラントの増強に廻してしまったのである。

ガミラスの冥王星前線基地司令、レッチェンスは本来、予備として天王星プラントは残して置きたかったのだが、
ガミラス本国はその必要を認めず、レッチェンスは仕方なく、全プラント設備を土星に移さざるを得なかった。

彼は地球ー木星航路の通商破壊活動を重視していたのが決して土星ー冥王星交通路の防衛を
軽視していた訳ではなかった。

だが、本国に要請した12隻の重巡の増強は拒否され、大型戦艦の配備時護衛に着いて来た軽巡4隻を
土星ー冥王星航路の防衛に当てざるを得なかった。

<こちらの航路の防衛にも重巡が使えれば安心なのだが・・・。>レッチェンスは一人ごちた。

しかし、彼は地球ー木星航路でガミラスの重巡戦隊と死闘を演じている地球の護衛艦の殆どが駆逐宇宙艦で
あるとは予想もして居なかった。

**********************************************

「目標補足!(ゲッタ・ブリップ!!)」シャルンホルストの艦橋に情報士官の声が響いた。

「大型タンカー2、巡航艦2、冥王星方面から飛来、距離10万!」

<さぁーて、お客さんが来たぜ、姉貴 どう御持て成しする?>フレイアがワクワクしながら語りかけて来た。

毎度の事ながら妹の好戦的態度にフローラーはあきれたが、部下達にそんな顔は見せられない。

落ち着いた態度で司令を発した。

「全艦、前進微速、そのまま接近!」

2隻の重巡、4隻の軽巡は土星の輪に身を潜めたまま、ガミラス船団との距離を詰めた。

「敵の方が速度が速い! このままでは目の前を素通りされます!」情報士官が状況報告をした。

「仕方ないわね。『シャルンホルスト』、『グナイゼナウ』は輪を出て最大戦速!敵船団の前に回りこんで!」
フローラーは間髪入れず敵の頭を抑える様、命令した。

細長いマッコウクジラを思わせる優美な艦体を持つ2隻の重巡が姿を表した。

e0266858_2284434.jpg

e0266858_15164172.jpg

僚艦「グナイゼナウ」 ( 第一特務戦隊所属 )
e0266858_19474798.jpg

ガミラスの巡航艦も2隻に気付き、砲塔をめぐらすと遠距離からフェーザーを打ちかけてきた。

と、地球艦隊の2隻は全く違う行動を取り始めた。

「シャルンホルスト」はゆっくり回転を始め、ガミラス艦に艦底を見せて止まった。

「グナイゼナウ」は猛烈な速度で突進し、距離を詰めて来た。

ガミラス護衛艦隊の司令は地球艦隊は一体、何をしようとしているのか、判らず判断に迷った。

普通、2隻の軍艦が戦隊を組んで行動する時、相手が1隻なら二手に分かれて挟み撃ちという方法も
考えられたが、この場合、敵味方同数である。 

挟み撃ちには到底出来ない、かえって自らの戦力を分散して不利になるだけである。

しかし、ガミラス側の司令は2隻の行動を好機と捉えた。

特に「シャルンホルスト」が底部をこちらに向けているのは故障か、何か、不備な状態に陥った結果だと判断し、
「グナイゼナウ」の迎撃に全力を上げる事にした。

しかし、実際は違っていた。

この底部を敵に向ける態勢こそ、「シャルンホルスト」クラスの装甲艦の攻撃態勢なのである。

「シャルンホルスト」は大抵の戦艦と同じ位か、少し厚めの装甲を持っていた。

だが、その装甲は底部のみで他は装甲されていない、というより細長い装甲板の上に兵装や機関、艦橋が
乗っているのだ。

そして、主兵装の11インチ大口径レーザー砲を3連双2段の砲塔に積み、この2組の砲塔を船体左右に
張り出して、底部の装甲板ごしに敵を攻撃する様になっていた。

この配置の場合、有人の艦橋は戦闘面から一番離れた位置となり、安全性も増す効果もあった。

フローラーは自ら艦橋直下の装甲板中央に開いた穴に設置されている装甲球にセットされた
カール・ツァイスの大望遠鏡で「グナイゼナウ」に迫ってゆくガミラス艦を捕捉し、艦の全長を利用した
大型測距儀で距離を測り直すと、12門の大口径レーザーを手前のガミラス巡航艦に浴びせた。

普通のレーザー射撃だったら簡単にガミラス艦は弾き返しただろう。

しかし、フローラーが放った一撃はガミラス艦の機関部近辺を打ち抜いた。

幸運な事にその一撃が当たったのは機関部のメンテナンス・ハッチだったのだ。

超一流の名人だけが引き寄せる事が出来る幸運だったのかもしれない、ガミラス艦は爆発して果てた。

もう1隻のガミラス艦が慌てて「シャルンホルスト」にフェーザーを打ちかけて来た。

しかし、並の戦艦より厚い装甲はいくらガミラス艦とはいえ、軽巡のフェーザーでは反対に弾き返されて
しまった。

もう一射、打ちかけ様とした時である。

「シャルンホルスト」にかまけて見過ごしていた「グナイゼナウ」が思い切り、距離を詰めてきていた。

「艦長!本艦は重巡です! 単座戦闘機ではありません!」 フレイアの乱暴な操艦に航宙士がコ・パイ席で
悲鳴を上げた。

「いただき! ミサイル斉射!」フレイアはガミラス艦を下から突き上げる強引な躁艦ですれ違った。

ガミラス艦は艦底部に9発もの反物性ミサイルを受けて重力崩壊を起こして消失していった。

「戦闘終了! ガミラスの輸送船2隻も軽巡部隊が片付けたわ。 次もこの調子でいきましょう。」フローラーは
快活に言って再び艦隊を土星の輪の中に潜ませた。

<次に来る船団の護衛は重巡、いや戦艦かもしれない・・・。>と言う恐れを部下に見せない指揮官の
苦悩を味わいつつ、部下達に仮眠を取らせて自分は一人、スクリーンに写る冥王星方向の宙域を見詰める
フローラーだった。


土星空域で地球艦隊が反撃を始め、地球ーガミラス双方とも辛抱強い通商破壊戦の応酬を始めた。

                                                    ヤマト発進まで2434日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-09 21:00 | 本文 | Comments(0)
 ミュンヘン市のスケートリンクの銀板の上に1つの影があった。

一人の少女がフィギャア・スケートの練習をしているのだ。

しかし、少女は世界選手権で使われる難易度の高い技を次々と信じられない様な高速で繰り出していた。

リンクの縁にはもう一人の少女の姿があった。

その顔は微笑んでいたが、その目からは涙が一筋、頬を伝って流れていた。

<フレイア、思い切り滑りなさい。 次はいつ滑れるのか、判らないのだから・・・。>フローラーは心の中で
言った。

<姉貴は良いよなぁ。 元々軍人なんだから・・・。 航宙士免許を持っているだけで無理やり軍人にさせられる
こっちの身にもなってみろよ!>正確にトリプル・アクセルを跳びながらフレイヤは毒づいた。

<文句は後で聞くから今は悔いの無い様、思い切り滑りなさい。>フローラーは妹の滑走を感慨深げに
見詰めながら思った。

フローラーとフレイアのライニック姉妹は冬季オリンピックの華であり、ドイツの誇りだ。

フローラーはバイアスロンの選手、フレイアはフィギャア・スケートの選手だった。

しかし、ガミラスの侵略はオリンピックの開催を不可能にしていた。

そして2192年9月には地球ー木星航路でガミラスが通商破壊を始め、地球に入ってくる資源やエネルギーに
影響が出始めていた。

そのため、スポーツ施設など不急の施設は次々と閉鎖されていった。

フレイアがミュンヘン市のスケートリンクで滑っていたのもこのスケートリンクが今日を限り、閉鎖されるから
であった。

また、ルフトハンザ・ドイツ航宙の最年少機長でもあるフレイアは他の航宙士免許を持つ同僚と共に
ドイツ艦隊に編入されてしまったのだ。

今は無心となって滑走に集中する妹の姿にフローラーの心は痛んだ。

そして、こうしたささやかな幸せを情け容赦無く奪うガミラスに対して怒りを覚えた。

**********************************************

<どこまで続いているんだろう・・・。>フローラーはこれから護衛してゆくタンカーの脇を進んで先頭に出ようと
していた。

彼女が指揮する駆逐宇宙艦Z-14の左舷には全長3kmはあろうか、1隻300m位のユニットが10隻繋がって
いるのだ。

その先頭のユニットのみ有人になっている。

その有人ユニットの艦橋、とはいっても航空機型の艦橋の窓には航宙士の姿が二人見えた。

地球ー木星航路が開設され、地球がエネルギーや資源を木星に頼る様になってもう50年が経とうとしていた。

その間に船の信頼性は上がり、今では船長と航海士、副長と副航海士の4人で12時間交代勤務で済むのだ。

しかし、今、ガミラスは地球経済に打撃を与えるべく、この地球ー木星航路を航行する輸送船やタンカーを
攻撃して来た。

各国、各勢力、とも自分の所の輸送船は自分の軍艦で守るのが精一杯だった。

米ソは土星会戦で多くの艦艇を失っていたが、持ち前の工業力で護衛艦隊だけは復旧させていた。

フローラーが護衛するのは当然、ドイツのタンカーだ。

<姉貴、よろしくな。>フローラーの脳の中にフレイアの思考が響いた。

フローラーの指揮する第3護送艦隊、4隻がの護衛するタンカーの副船長はフレイアだった。

<まあ、木星からの帰りだけ心配すればいいんだけどな。>

<そうね、 空荷のタンカーを襲うとは考え難いわね・・・。>一応、賛同したフローラーだったが、
何か一抹の不安を覚えた。

「コントロール、標準時16時、タンカー『ジークフリード』木星に向かい、発進します。」船長が管制官に告げた。

地球衛星軌道上にある航宙管制センターの管制官はタンカー『ジークフリード』及び第3護衛艦隊の出航を
許可した。

<さて、俺は次の直だから一休みするわ。 護衛の方は頼んだぜ。>フレイアの思考がフローラーの
頭の中に響いた。

<全く、もう、こっちは直を組めるだけの人員の余裕はないわ。 軍艦は辛い・・・ってとこかしらね。>

フローラーがぼやいて見せたが、実際には幾ら軍艦でも人が動かしている以上、休息は必要だった。

先程、フレイアが言っていた様に、地球→木星間で襲われる確率は低い。

だから、自動航行装置(オート・パイロット)を使って1隻を残して全員、仮眠を取る事になっていた。

しかし、フローラーはどうしても不安を拭い切れず、自分の席で仮眠を取る事にした。

**********************************************

船団が火星軌道に入ろうとした時である。

当直だった駆逐宇宙艦Z-15から警報が入った。

艦長席で仮眠を取っていたフローラーは直ぐに身を起こすと状況報告をさせた。

e0266858_1363556.jpg


「識別表によるとガミラス巡航艦2隻が1時の方向から接近して来ます! 距離1万5千!」

Z-16は反物性ミサイルの発射許可を求めて来た。

しかし、フローラーはそれを許可しなかった。

代わりにZ級駆逐宇宙艦の主兵装である6インチフェーザー砲の全艦リンク射撃の準備をさせた。

「敵との距離、1万を切りました。 あっ! 敵艦発砲!」観測員の悲鳴が走る。

フローラーの乗るZ-14のブリッジの脇を極太のフェーザー・ビームが擦過する。

Z-16は敵のフェーザー・ビームに第3砲塔をもぎ取られていた。

我慢しきれなくなったZ-16は単独で残り2門のフェーザー砲を敵に向けて発射、ビームは敵艦ブリッジ下の船体に命中した。

しかし、6インチと比較的小口径のフェーザーはガミラス艦の厚い装甲を破れず、弾かれてしまった。

「戦隊長! フェーザーは効きません! やはり反物性ミサイルを!」副長が進言した。

「黙って!」 射撃管制員の席を占領したフローラーはモニター上に写しだされたガミラス艦のブリッジに
照準環(ピパー)を合わせた。

そして、戦隊全艦の射撃リンクが成立しているのを確認すると冷静に引き金を引いた。

Z級の駆逐宇宙艦のフェーザー砲は6インチ単装砲塔3基だ。(但し、今回Z-16は砲塔を1基失っていたが・・・。)

1戦隊4隻、11条のビームがガミラス巡航艦のブリッジに集中した。

被弾したガミラス巡航艦がよろめいた。 

明らかに乗組員に損害を与えたのだ。

するともう1隻のガミラス艦が被弾した僚艦に至近距離からビームを浴びせた。

6条の大口径フェーザー・ビームに貫かれたガミラス艦は木っ端微塵に吹き飛んだ。

被弾して損害を受けた僚艦を始末したガミラス艦は反転すると宇宙の闇に消えていった。

「恐ろしい奴等ですね。 仲間を何の躊躇いも無く始末するとは・・・。」副長がフローラーに言った。

<面白くはないが、ガミラス艦が傷ついて航行不能になった僚艦を始末したのは当然だな。>フレイヤの思考が
割って入った。

ガミラスと地球のテクノロジーは微妙なバランスを保っていた。

ガミラスはワープなど様々なオーバー・テクノロジーを持ってはいたが、地球がそれを理解出来ない訳では
なかった。

特に波動エンジンなど、もし、無傷で地球側の手に渡ったら一気に態勢を挽回されないとも限らないのだ。

<そうね・・・。立場が違えば私達でも遣らざるえなくなる場合があるかもね・・・。>フローラーは戦争の
持つ理不尽さが許せなかった。

**********************************************

木星が眼前の視界を埋め尽くす程の距離まで船団は接近していた。

<結局、あれ以上の攻撃はなかったな。 姉貴の腕に恐れをなしたのかな?>フレイアがちゃかした。

しかし、フローラーは別の事を考えていた。

何故、ガミラスは空荷で身軽な往航時の船団を襲って来たのだろう?

タンカーや輸送船が満載で動きが取れない復航時に襲撃した方が効果が上がりそうなものなのに・・・。

フローラーは「はっ」と気付いた。 

<なんて悪賢い・・・。>ガミラスの戦略を指揮しているのは相当な知恵者だと思った。

確かに復航時に襲う方が襲撃の効果は上がりそうに思える、しかし、地球側の兵器で確実にガミラス艦を
仕留められるのが反物性ミサイルだという事を考慮すると事情が変ってくる。

ドイツのZ級駆逐宇宙艦以外の各国の駆逐宇宙艦は主兵装が反物性ミサイルでフェーザーは5インチと
小口径である。

フェーザーではなく、レーザーを積んだ旧式艦も多い。

フローラーが行ったフェーザー主体の戦闘は出来ないのである。

だから、往航時に襲撃して護衛艦の反物性ミサイルを消耗させてしまえば、復航時に地球の護衛艦の武装は
無いに等しいものになるのだ。

これでは復航時の襲撃はガミラス艦の思いのままになってしまう。

往航時の空荷の輸送船に出来るだけ多数の反物性ミサイルを積んで木星プラントに備蓄しておく必要が
ありそうだ。

フローラーは木星プラント到着後に総司令部に戦闘報告と共にミサイル備蓄の提案をする事にした。
e0266858_1182193.jpg

e0266858_5335145.jpg

**********************************************

復航時の航行は案の定、ガミラス艦隊の襲撃が絶え間なく行われた。

多分、往航時に撃破した艦隊の残存艦からの情報に基づくものと考えられた。

今度はワープを使った一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦法での襲撃だった。

多分、ガミラス艦は、こちらの探知外に遊弋していて、こちらの位置を特定し、小ワープで接近してくるものと
思われた。

フローラーはドイツ艦隊本部に早期警戒システムを積んだ艦艇が近くにいないか、問い合わせた。

 復路上には該当艦はいなかったが、往路上には日本艦隊の『たかお』がいた。

この巡航宇宙艦は2165年進宙の旧式艦だったが8インチ連双フェーザー砲塔を5基装備と強兵装だった。

そこで、2基の砲塔を降ろし、代わりに初期のコスモ・レーダーを積んで早期警戒艦に改装されていた。

日本は第2次大戦で早期警戒の失敗で破れた戦いを幾つも経験しており、それ以降、早期警戒システムの
充実には力を入れていたのだ。

「たかお」の艦長は窮状を訴えるフローラーの要求をすぐさま聞き入れてくれ、タンカー『ジークフリード』の
周辺の空間を走査した。

果たせるかな、タンカー『ジークフリード』の船団の左舷、3万宇宙キロの所をガミラス艦3隻が平行して航行
していた。

<こっちが手の出せないと思ってこれ見よがしに遊弋しやがって!>フレイヤが切れた。

<いやどこにいるか、判れば対処の方法もあるわ。>フローラーは微笑んだ。

第3護送艦隊は既に1隻の護衛艦、Z-16を失っていたが、フローラーは相手の挑発に乗せられる事なく、
反物性ミサイルはまだ充分持っていた。

「フレイア少尉、反物性ミサイルの推力を絞って最後は慣性力で敵艦隊に届かせる軌道計算プログラムは
組める?」

「そうね、ざっと見積もっても到達時間は1時間位かかるわよ。」複雑な軌道計算をフレイアは暗算で
概算数値をだした。

「いいじゃない。直ぐに計算データをこちらに頂だい。 護衛艦Z-15は残りの反物性ミサイルを全部、
そのプログラムで発射。

護衛艦Z-17は本船団右舷、1000宇宙キロの所をこちらと平行に慣性航行させる様にミサイルをプログラムして発射して!  もちろん、全弾よ!」

直ぐに命令は実行され3発のミサイルが獲物を待ってひっそりと船団から1000宇宙キロの所を平行して
慣性航行し始めた。

「戦隊長、 罠をはるんですね。 しかし、次のワープで右舷に出現するとは限らないのでは?」副長が
疑問を口にした。

「本船団は間も無く火星軌道に入る、しかも今、ガミラス艦の遊弋している付近は火星の衛星、ダイモスの
軌道と重なる、否が応でも位置を変えなければならないわ。 

ガミラス人の心理は判らないけど、地球人と同じなら、確実にダイモスの軌道を大きく避ける方法をとるわ。」

<その予想が外れたらどうするんだよ?>フレイアが思考で聞いてきた。 

<当たるまで待つだけよ。>フローラーさらりと言った。

それに火星軌道より地球よりの宙域はまだまだ地球の勢力圏内だった。

すでにフローラーからの救援要請は火星基地に届いており、ガミラス艦といえども長居出来る状態では
なかった。

「『たかお』から入電! ガミラス艦が3隻とも消失しました。 小ワープに入ったものと思われます。!」通信士が
叫んだ。

全員が右舷を見た。   

フローラーの予測どおり、ガミラス艦は右舷に出現するとすぐさまフェーザーを打ちかけて来た。

今までの襲撃ではガミラスは護衛艦をまず始末しようと護衛艦隊に攻撃をかけてきたが、今回はタンカーを
目標にして来た。

タンカーは全長3000m、全幅200mの巨体である。

たちまちガミラスの全ビームはタンカーの巨体を貫いた。

しかし、装甲板もない、酸化剤も積んでいないタンカーはビーム直径の穴が開くだけで積んでいるメタンガスが漏れ出すだけだった。

しかも、300mX200mのユニットを10個繋いで1隻になっているタンカーを始末するには全ユニットに穴を開ける必要があった。

護衛艦の妨害さえなければタンカーに平行して航行しながらフェーザーを浴びせ続ければ直ぐに済む
簡単な任務だったが、護衛艦がいる以上、自らが固定目標になってしまうこの方法は使えなかった。

だが、火星基地からの応援を気にするガミラス艦隊は焦っていた。

今までの一撃離脱戦法をやめ、2隻が護衛艦を引きつけ、1隻がタンカーを攻撃する作戦に切り替えてきた。

しかし、これこそ、フローラーの狙っていた状況だった。

予め戦闘予想空域に放っていた反物性ミサイルはガミラス艦を探知すると自動で追尾し始めた。

護衛艦とタンカーに注意を引き付けられていたガミラス艦は密かに追尾してくる反物性ミサイルに
気付かなかった。

そして、最後尾にいたガミラス艦は3発の反物性ミサイルを機関部に受け、爆沈した。

残りのガミラス艦は驚いたが、すぐさま退避に入った。

しかし、新たなワープ目標を設定している暇などあろうはずもなく、待機位置に戻るプログラムを使用せざるを
得なかった。

そしてこれこそ、フローラーが仕掛けた罠の本命だった。

船団左舷の遥か彼方に光点が灯った。

「ミサイル命中!」船団各艦の艦橋は歓声に包まれた。

しかし、フローラーは起こった爆発が予定していた爆発より大きかった事に不審をいだいた。

だが、その疑問は『たかお』からの通信ではっきりした。

フローラーが仕掛けた浮遊ミサイルとその空間に戻ってきたガミラス艦が同じ空間を占めたのである。

物質重複・・・それはこの宇宙で考えられる最大最強の爆発だった。

爆発したガミラス艦は原子レベルどころか、光子になって飛散した。

もう1隻残ったガミラス艦は至近距離でその爆発に巻き込まれた。

地球艦だったら誘爆していたかもしれない。

しかし、堅牢な構造のガミラス艦はその爆発に良く耐えた。

とはいっても、中破してしまったのか、戦闘継続を断念してワープして消えていった。

「今度は『たかお』の探知範囲内にはもはや存在しないそうです。」通信士が報告した。

<どうだい、俺の軌道計算は大したもんだろう!>フレイアの得意げな思考が響いた。

しかし、フローラーの頭の中には別の思考が渦巻きはじめていた。


                        ガミラス通商破壊艦、猛威を揮い始める。  ヤマト発進まで2603日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-05 21:00 | 本文 | Comments(0)
2012,7,6 図版入れ替えと説明追加

 「閣下!来ましたぞ! あそこに見えます。」 シュルツはレッチェンス大将に告げた。

冥王星前線基地の司令室のスクリーンにはもうその姿は明確に映し出されていたが、展望室にいるレッチェンスの肉眼にはまだ一粒の光点にしか見えなかった。

しかし、百戦錬磨の戦士であるレッチェンスにはそれだけで充分だった。

「総司令部め・・・。 やはり、わしの要求を無視しおったわい。」そう呟くと下の司令室で大型戦艦の勇姿に感動しているシュルツ大佐とガンツ中佐を見て溜息をついた。

大型艦が配備されるのは嬉しい事だとレッチェンスは思ったが同時に用兵を軽んじる総司令部には不満を抱いた。

 そうしている内に大型戦艦は展望室の真近にまでやって来た。

逆噴射をかけつつ、減速したその巨体にレッチェンスは思わず感嘆の声を上げた。

流麗な曲線に彩られつつ、多数のミサイル発射管を持ち、駆逐型デストロイヤーとは比較にならない
大口径の三連双主砲塔を三基、駆逐型デストロイヤーと同威力の副砲塔を四基備えたその戦力は
絶大なものだったからである。
e0266858_7112332.jpg

e0266858_15242497.jpg

「こいつの同型艦がもう一隻あれば強力な戦隊が組めるものを・・・。」レッチェンスは一人ごちた。

「レッチェンス様! 大型戦艦がドックに入りました。 早速視察なされますか?」ガンツ中佐がスクリーンから
目を離し、上の展望室にいるレッチェンスの方を向き直して言った。

ガンツは自分が大型戦艦の副長になれると思い、意気込んでいた。

「視察するのは良いがお前はこの戦艦には乗り込ませないぞ。」ガンツの心を見透かしたレッチェンスは言った。

「で、では副長はシュルツ大佐ですか?」残念そうに返すガンツ。しかし、レッチェンスはニヤリと笑って
シュルツ大佐の方を見た。

「シュルツ大佐、君には従来通り、この前線基地の司令を担当して貰う。」

「ではご自身が艦長を?」シュルツは不満そうに言った。

これだけの強力艦だ。大将は自分の物にしたいのだろう。と思ったのだ。

しかし、レッチェンスは二人のそうした思いも見抜いていた。

「シュルツ君。この艦の乗員を選んで訓練して置きたまえ。 この艦が必要になるその時までに・・・」

「と申しますと?」シュルツは怪訝な顔をした。

「大型戦艦は君にやる、と言っているのだ。」

「はあ?」シュルツとガンツは顔を見合わせた。

「幸い今、相手にしている地球艦は駆逐型デストロイヤーで充分相手に出来る。

また、間も無く行う予定の木星圏掃討作戦までには大型艦の乗員訓練は間に合わない。

太陽の大活動期が迫っている、木星圏掃討作戦はその前に済ませたいのだ。

そして一番重要なのはこの艦が一隻しかないと言う点だ。

最低もう一隻はいないと戦隊は組めない。 戦隊を組めない戦艦は幾ら強力でもハリコの虎だ。

性能の劣った艦と戦隊を組んでも性能の低い艦に合わせた戦い方しか出来ない、それでは折角の
大型戦艦も宝の持ち腐れだ。

それに、今、必要なのは通商破壊戦に使える巡航艦だ。

だから、わしは本星に重巡十二隻の増強を要請したのだ。

e0266858_1941313.jpg

e0266858_15313233.jpg

しかし、大型戦艦一隻で済まされてしまった! わしも随分と舐められたものだ。」レッチェンスは自嘲した。

「しかし、このまま済ます訳には行かん!シュルツ君、護衛に付いてきた軽巡四隻を差し押さえろ! 
通商破壊戦に廻すのだ。」レッチェンスは吼えた。

e0266858_1942139.jpg

e0266858_15411698.jpg

「では、木星圏侵攻作戦には大型戦艦は使わないお積もりで・・・。」シュルツは驚いた。

「そうだ。侵攻作戦は従来艦だけで行う。全艦隊を三グループに分け、二グループはわしが率いて正面から
攻撃する。

残りの一グループは遊撃隊を組織する、ガンツ、君が指揮しろ!」

「私がですか?」ガンツは驚いて自分の顔を指差した。

「そうだ、ガンツ、君の努力が報われる時だぞ。 シュルツにはここに居て後詰を頼む。

もちろん大型戦艦を一日も早く運用出来る様、乗員の訓練は続けていてくれ。」

レッチェンスはガンツが日頃、暇を見つけては木星圏の侵攻作戦を彼なりに研究していたのを知っていたのだ。

そしてまた、レッチェンスは士気に係わるので心に秘めていたが、一隻しか無い大型の強力戦艦の使い道は
撤退作戦での殿軍だと決めていた。

だが、そのレッチェンスでさえ、そんな事態が実際に起こるとは露ほどにも考えていなかった。

**********************************************

「首相、先月落下してきた隕石は人為的な攻撃だった事が判明しました。」防衛大臣が報告した。

「例の異星人の仕業か? 勝てる保障はあるのか? 被害が少ない内に降伏した方が良いのではないか?」
首相は防衛大臣に戸惑った様な顔を見せた。

防衛大臣は<この人ではだめだ・・・。 「箱舟」計画は打ち明けられない・・・。>と直感的に思った。

今回の侵略が最悪の展開となった場合、出来るだけ多くの人員や生命を地球から脱出させる
真にノアの「箱舟」と呼べる計画が密かに始められていた。

しかし、この計画の内容が漏れると市民の間にパニックが広まる恐れがあり、実行寸前まで絶対に
その存在すら知られてはならなかった。

まだ、計画の段階で規模や予算など全く決まっていなかったが、どんな最悪の事態となっても
人類と地球生命の火種を絶やさないと言う強力な意志の基、「箱舟」は動き出そうとしていた。



                                    ー「箱舟」計画が浮上、ヤマト発進まで2,622日ー
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-02 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「沖田、防衛会議の感触はどうだった?」土方竜大佐は土星会戦で米ソ艦隊が文字通り、命を賭けて取った
侵略者の情報に基づく、防衛会議の基本戦略方針について沖田少将にたずねた。

「どうもこうもないよ。 なにせ米ソ合同艦隊が全滅させられたんだ。 各国、各勢力ともパニックになっているよ。

まあ、それでもシェーア大将の音頭取りで防衛計画の大要は決まったがね。」沖田は手にしたグラスに入った
ウイスキーをチビチビと舐めた。

「具体的には?」自分のグラスを廻しながら土方は上目遣いに沖田に聞いた。

「木星圏を絶対防衛圏として地球の生命線を確保する、当然、地球ー木星間の交通路もだ。」

「ウム、それは当然だ、 地球のエネルギーは各国、各勢力とも木星プラントに頼っているからな。

それで米ソの艦隊再編成後の反抗作戦についてはどうなった?」

「いやいや、まだそこまで煮詰まった話は出来る状態ではないよ。 残念ながらな。」沖田は溜息をついた。

「相手の目的がはっきりしないのでは戦略の立てようがない・・・か。」

「しかし、土方、ここだけの話だが、土星会戦時に敵は気になる武器を使いよった。」沖田は防衛会議出席者
ではない土方に極秘事項を告げた。

それはガミラスが土星会戦の勝機を掴むために使用した遊星爆弾の事だった。

大質量兵器が艦隊戦に使われる事は地球では考えにくいものだったからである。

沖田はこれが本来は戦術兵器としてではなく、戦略兵器として敵の拠点攻撃に使われるものだと看破したのだ。

そして、防衛会議で戦略攻撃の標的として地球が狙われた場合を考え、火星軌道上に迎撃システムを
構築する様に提案したが、異星からの侵略に混乱した会議ではその重要性が認められる事はなかった。

「その戦略兵器を迎撃出来る兵器や艦艇を今から用意しておく必要があるな。」土方も沖田と同じ考えだった。

「藤堂長官とも良く打ち合わせて置くよ。 長官なら南部重工業とのパイプも太いからな。」沖田は土方と
グラスを合わせた。

**********************************************

 冥王星からそれほど離れていない宙域にガミラスは遊星爆弾の発射施設を建設していた。

土星会戦の時に使用した遊星爆弾は工作艦を使った応急的設備で発射したのだが、地球に対する本格的
戦略攻撃のためには専用の設備が必要、とのレッチェンスの判断で発射施設がつくられているのだ。

 「シュルツ副指令、設備の完成はもうすぐです。間も無く遊星爆弾の第一発目を地球に対して発射できます。」

工事の進捗状況を視察に来たシュルツ大佐に工事責任者のヨルク技術中佐は説明した。

「ウム、早く遊星爆弾が、どの様な効果を挙げるか、見てみたいものだな。 出来るだけ早くな・・・。」シュルツは
意味ありげに言った。

「発射するだけなら、今の完成状態でも充分行えますが・・・。」ヨルクは応えた。

「ヨルク君、早まってはいかんよ。 折角発射するのだったら、きちんと最終誘導まで行って地球に命中
させなければ実験としても意味がない。 確かに早い成功は勲章ものかもしれんが・・・。」 シュルツは
横目でヨルクを見た。

ヨルクは自分の任務に強い圧力が掛けられているのを感じた。

「はっ、出来るだけ火急速やかに遊星爆弾発射システムを完成いたします。」ヨルクは最敬礼をした。

「ウム、よろしい。 レッチェンス様も期待しておられるぞ」シュルツはニヤリと笑うと視察を終わり、基地へ
帰っていった。

 実はシュルツは土星会戦で見た地球人の底力に畏怖を抱いていたのだ。

レッチェンスは土星にエネルギー・プラントを設け、木星圏侵攻に必要な資源やエネルギーの備蓄が整うまで、
木星ー地球間の交通路に通商破壊艦隊を複数放って地球側の経済や軍備の妨害を行うつもりだった。

しかし、そのためには時間が掛る、その間に地球側に軍備を増強されたらと思うと居ても立ってもいられない
シュルツだった。

彼はレッチェンスに遊星爆弾による戦略核攻撃を提案していたが、レッチェンスは地球側に体力がある内は
戦略攻撃はこちらの手の内を明かすだけで簡単に迎撃されてしまうと考え、シュルツの案を退けていた。

レッチェンスは戦略核攻撃を行うのは最低でも木星圏を制圧した後だと考えていたのである。

しかし、シュルツは一刻も早い戦略核攻撃こそ地球側の機先を制し、ガミラスの勝利を確実にするものだと
思っていた。

ガミラス侵攻軍と言えど、決して一枚岩ではなかったのである。

**********************************************

 「目標補足! 距離1万キロ! 射程距離までまだ大分あるが、本当に良いのか? ライニック大尉?」
艦長が聞いた。

「見ていてください。 艦長。」フローラー・ライニック大尉は自信たっぷりに言った。

彼女の前にはこのドイツ駆逐宇宙艦Z-7の武装を全て官制する射撃指揮装置があった。

そして、今、そのモニターには何も写っていない様に見えた。

だが、彼女が見詰めるモニターの上にはピパーと呼ばれる指輪大のリングが映っていた。

そして、両手の指先を動かすとそのピパーの位置が微妙に変る、ピパーが目標と完全に重なった。

「ピパー・オン・ターゲット!! (照準完了!)」フローラーは艦長に報告した。

「ファイア!(撃て!)」間髪入れず艦長が命令を下した。

ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は駆逐宇宙艦にしては大口径のフェーザー砲を持っていた。

6インチ単装フェーザーを3基の砲塔に別けて積んでいたのだ。

その全門のフェーザー・ビーム条が遥か1万キロの彼方で一点に交わった。

たちまち、その空間に標的命中の証である小爆発が起こった。

「シュミレーターでは何編も見せてもらっていたが、実際の標的でも同じなんだな・・・。」艦長は感嘆した。

「シュミレーターと実際が違っていてはシュミレーターで訓練する意味がありません。」フローラーは笑った。

「しかし、見事なものだ。さすが、オリンピック常勝選手だ。 感心したよ。」艦長は和やかに笑った。

しかし、フローラーの心は曇っていた。

彼女は冬季オリンピック、バイアスロンの選手だ。 何度もメダルを手にしていた。

しかし、侵略者の出現が地球にオリンピックなどを行う余裕をなくさせていた。

いや、彼女の心が曇っているのは侵略者相手とはいえ、実際に命のやりとりをしなければならない事だった。

<何匹、いや何人殺すのか・・・。> 彼女はこれから続くであろう長い戦いを思った。

**********************************************

ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は木星ー火星の間に広がる小惑星帯にいた。

ここは他の宙域に比べれば漂う岩塊の密度が高く、演習にはもってこいの空間だったからだ。

とはいっても見た目は他の空間と何も変らなかったが・・・。

Z-7の遥か前方で先程の演習で見たのとは比較にならない大きな爆発が起こった。

「なんだぁ! この宙域では本艦しか、演習をしていないはずだぞ!」艦長が血色ばんだ。

「隕石です。 外宇宙方面から進入して来た隕石と小ぶりの小惑星が衝突した様です。」観測員もかねる
フローラーが報告した。

「同方向から後、三個続いて飛来してきます。」

「外宇宙? 彗星ではなく・・・複数の隕石がか?」艦長はいぶかしんだ。

外宇宙方面から飛来する隕石は大抵、彗星に由来するものか、彗星が引き連れて来たものである。

群れとはいえ、隕石だけで飛来するのは考えにくい現象だった。

「大変です。 艦長! あの隕石群の進行軌道上には地球があります。 衝突確率70%です。」フローラーは
恐るべき予想を口にした。

「地球防衛軍に警報! ライニック大尉、データを至急本部へ送れ!」艦長は命令を発した。

「了解!警報とデータは送りました。 しかし、艦長、本艦は迎撃しないのですか?」フローラは
不満そうだった。

「現在の本艦はミサイルを持っていない。 迎撃は無理だ。 地球本部に任せよう。」

艦長はフェーザーでは隕石を細かく砕いても地球大気圏に突入した時、燃え尽きる大きさにまで小さくするのは
不可能と判断したのである。

ミサイルなら爆圧で軌道をそらせる効果が期待出来たが、それも今は使用されない核や反物質の
爆発型弾頭のものである必要があった。

いたずらに目標を小さくしてしまうが、軌道はほとんど変えられないフェーザーや爆縮型弾頭の
反物性ミサイルではかえって最終迎撃がしにくくなるとの判断が艦長にはあった。

「そうですね・・・。任せましょう。」フローラーも不承々、承知するしか無かった。

**********************************************

「こちらでも捕らえました。 かなり大型の隕石、3個です。」月面にある地球防衛軍基地でもZ-7が警告した
隕石群を捉えていた。

「迎撃可能なマス・ドライバーは何基あるか?」基地指揮官は尋ねた。

宇宙時代に入り、隕石による地球被災の可能性が本格的に心配される様になったが、地球の地表まで
達する様な大型の隕石が飛来する事など非常にまれな事なので、それ専用の迎撃設備など存在しなかった。

そこで月表面上から宇宙空間へ資源を運搬するのに用いるマス・ドライバーで岩塊や爆発物を打ち出し、
迎撃するのが一般的だった。

「あることはありますが・・・。」副官は言葉を濁した。

「この隕石の軌道から言って迎撃可能なのはM・D-01のみです。 1個迎撃するのが精一杯です。」

マス・ドライバーは本来、兵器ではない、精密照準で速射する様には出来ていなかった。

「仕方が無い。 我々は出来る事をやろう。 地球本部へ警報! 運が良ければこの迎撃で残りの2個の軌道が
変って地球に当たらずに済んでくれるのを祈ろう。」
月面にあるマス・ドライバー、M・D-01は着々と隕石群の迎撃準備を進めた。

「この反物質弾頭、一体、何時作られたものなんだい?」作業員の一人がマス・ドライバーの装填口に
迎撃用の爆弾をセットしながら、同僚に話かけた。

「俺が知る限り、演習以外でこのM・D-01が隕石迎撃に使われた事はないからなぁ。 爆発するかどうかも
判らないぜ。」同僚の作業員は無責任な反応をした。

しかし、装填された反物質弾頭はまるで昨日作られたかの様にピカピカに輝いていた。

**********************************************

 ガミラス冥王星前線基地の司令室でレッチェンスは目の前の大型モニターに写っている宇宙空間を
見詰めていた。

背後に人の気配がした。 シュルツ副指令だった。

「報告します。 ヨルク技術士官の処刑が終了しました。」シュルツはレッチェンスに機械的に告げた。

「ウム、死体は宇宙空間に捨てたまえ・・・。」

「それは宇宙葬にすると言う事ですか?」シュルツは意外な命令・・・という顔をした。

反逆者は八つ裂きにして荒野に放置するのがガミラスの伝統だったからである。

 ヨルク技術中佐は遊星爆弾発射設備が完成する前に発射実験と称して遊星爆弾を4発も地球に向けて
発射したのだ。

しかも自分からガミラスを名乗り、地球に対する降伏勧告付きで!だ。 

これはレッチェンスの戦略方針から真っ向から反対する行為であり、立派な反逆罪であった。

その結果、レッチェンスが恐れた通り、一発は地球に命中させる事に成功したが残りの3発はことごとく
迎撃されてしまった。

<これで地球側は遊星爆弾の迎撃システムを構築するに違いない・・・。>

<ヨルクはこんな事で効を焦る様な男ではなかったはずだが・・・。>レッチェンスは信頼していた部下に
裏切られた悲しみで一杯だった。

「シュルツ、ヨルク技術中佐は有能で真面目な男だった。 何が彼に今回の様な罪を犯させたのか、判らん。」

「技術者とはいえ、彼も軍人でした。 やはり、手柄を立てたかったのでしょう。」シュルツは自分がけしかけた事
などおくびにも出さず、さらりと言った。

「そうか・・・。君も彼が軍人だったと思うか・・・。 ならばせめてそれに相応しい弔いをしてやれ・・・。」
レッチェンスはシュルツをギロリと睨んだ。

「ハッ! しかし奴は反逆者です! 弔ったりしたら示しがつきません!」

「だから、『宇宙に捨てろ!』 と言ったのだ。 お前の裁量としてな!」シュルツに背を向けたままレッチェンスは
言った。

「ハッ! 了解しました。 仰せの通りに致します。」シュルツは心の中でニヤリとしつつ、退室した。

**********************************************

地球防衛軍司令部は重苦しい空気に包まれていた。

先日、地球に落下し、日本の三浦半島を直撃、甚大な被害をもたらした隕石の正体が判明したのだ。

隕石の落下直後に、地球は英語とロシア語の入り混じった奇妙な通信を受け取っていた。

その解読が先程出来上がって来たのである。

『我々はガミラス帝国、地球よ、滅亡か、我々の奴隷になるか、選択せよ。 我々は星すら動かす力をもつ、
抵抗が無駄な事は今回の攻撃で判ったはずだ。 良い返事を待つ。』

先日の隕石の落下は明らかに人為的なものの疑いが濃かった。

それが、ガミラスと言う敵の示威攻撃だった事がはっきりしたのだ。

土星会戦の結果と合わせて文明の程度に大きな開きがある事も判った。

しかし、このまま何もせず、敵の軍門に下るのは戦争に明け暮れていた地球人の誇りが許さなかった。

<長い戦いになるな・・・。>藤堂は沖田の顔を見た。

しかし、沖田は何故かいぶかしげな表情をしていた。

長い会議が終わると藤堂は沖田に理由を聞いた。

「長官、今回の敵の示威攻撃だが、何かタイミングがおかしい。

確かに遊星爆弾による戦略核攻撃は脅威だが、木星より内側が我々の勢力圏にある内は迎撃は不可能では
ない。

今回の会議でも遊星爆弾の迎撃に関してはどの国、どの勢力とも意見の一致を見た。

次の攻撃はたぶん、迎撃が成功するだろう。

まるでガミラスは自分の手の内を明かしてくれている様だ。」

「それはまだ敵に隠し玉があると言う事だろう?」

「そうかもしれん。 しかし、わしは敵の内部にも問題があると踏んだ。」

「我々にもまだ勝機があると言う事かね?」沖田の性格を良く知っている藤堂は確かめる様に聞いた。

「勝機? それは諦めさえしなければ何時でもある。」沖田は歴戦の勇者のみが見せる微笑を見せた。

                                    

                        時に2192年7月20日 ガミラスの遊星爆弾の示威攻撃が行われた。
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-03-30 21:00 | 本文 | Comments(0)