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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 「 "大帝陛下" との ”約束の刻限” が迫っておりまする。
遅参いたせば”大帝との会見” 、失敗に終わるやもしれません。」 ”迅雷” のガルダ・ドガーラがテレサ・テレザートに
予定の遅延を苦慮した。

「仕方ないじゃろ! ”古への星の海往く船乗りの約定” は本来、我がガトランティスに源を発する "約定"じゃ!
見捨てる事は出来ん!」テレサには己の行為に恥じる所など無かった。

<テロンのヤマッテはともかく、今度はガミラスの小艦隊、こいつ等は動かし様の無い我がガトランティスの敵!
何故ここまで御身体を危険に晒してまで助けたのか、儂には理解出来ん・・・。> テレサの武勇は本物だ。

それは実際剣を交えた事のあるドガーラ自身が一番良く知っている。

<テレサ・テレザートはガトランティス史上に確実に名を残す勇者に間違いはあるまい、しかし、敵に情けを掛けると
言っても限度がある!>ドガーラは ”ゴルエン族の客分” 時代の好戦性がまだ抜けていないのだ。

しかし、そんな事を気にするテレサ・テレザートでは無かった。

ボ・ルドウ侍従長はテレサがドガーラを側近に選んだ時、昨日の今日まで敵だった男を信用するのは反対だと
強硬に主張していた。

しかし、テレサはドガーラの剣を取り上げる事もせず、側近の一人として取り立てたのだ。

「使命の神託」を得、シェザード族から正式に分家したテレサ・テレザートは家臣もシェザード族時代から一新する必要が
あったからだ。

これからテレサは「使命の神託」を得た者としてガトランティスの数多ある部族の中で特異な行動を取る事になる、
場合によっては ”大帝” はおろか、父王、その人が率いるシェザード族さえ敵に廻さねばならなくなる可能性も
あるのだ。

< まっ、先の事は幾ら心配しても始まるまい・・・。 それよりもまずは ”大帝” との会見を成功させる事じゃな・・・。>
テレサは先の事をくよくよ悩む性格では無かった。

「 "迅雷の戦士" よ。 妾が "大帝の旗艦” に移乗したら直ぐに艦隊を離れよ。」テレサはドガーラの思いもよらぬ事を
言った。
 
「何故で御座りまする! 我に "陛下" をお見捨てする事など出来もうさん!」ドガーラは理不尽なその命令に納得が
いかなかった。

「慌てるな。この命令には続きがあるのじゃ。」テレサは悪戯っぽく微笑むと詳しい作戦計画をドガーラに話した。

「は、はぁ~っ。」作戦内容を聞いたドガーラは一応、平伏したが、その心の内では<そんな事が "人の身" に
出来る事>とは思えなかった。

**************************************************

 <遅い約束の日時を二日も過ぎている! あのじゃじゃ馬め、また逃走したのではあるまいな!>

シファル・サーベラーはテレサ・テレザートの遅参に痺れを切らしていた。

そこへ船着き場からテレサ・テレザートの来訪が告げられた。

「よし、従卒を派遣する。 それとテレザート殿の随行は何名か?」

問いかけられた出迎えの将校は戸惑った声で応えた。

「テレサ・テレザート様、御一人です。 御一人で短艇を操艇して来られました。」

「とにかく "謁見の間" にお通ししろ!」サーベラーはテレサの意図が分からず考え込んだ。

<この "大遅参" と "単身での謁見"、・・・ 何か関係があるのか・・・。だとしたらそれは一体何だ?>サーベラーの心は
猜疑心から千路に乱れていた。

不安な想いを抱きつつ、サーベラーは "大帝" に付き従って "謁見の間" に入った。

"大帝の玉座" は謁見者の居る広間より五段分高い位置にあり、"刺客" の襲撃を行い難くしていた。

そこに "大帝" が座るとテレサが訪問の口上を述べた。

しかし、そこには "遅参" の "詫び" はあっても "理由" は無かった。

「 "大帝" を二日もお待たせしたのは何故か?」サーベラーは怒りを面に出さぬ様気を付けながら尋ねた。

「理由は明かせませぬ。”古への星の海往く船乗りの約定” ゆえ ・・・。」テレサは大胆な事を告げた。

「訳の分からぬ事を言う女じゃ! 二日もの間どこで何をしていたと問うておるのじゃ!」今度は流石にサーベラーも
切れた。

「”古への星の海往く船乗りの約定”か・・・。 久しく聞かぬ言葉だ。 お前がそれを成したと言うのか、
テレサ・テレザートよ。」それまで沈黙を守っていた "大帝" が初めて口を開いた。

「いけませぬ! "大帝" 、こんな成り上がりの女族長に言葉をお掛けに成る等勿体無い! 伝えたい事がおわすなら、
この丞相、"シファル・サーベラー" がお取次ぎいたしまする。」サーベラーは面目を失い慌てて抗議した。

「良いではないか、たまにはお前以外の女と公の場で直接話すのも一興だ。」"大帝" はサーベラーの抗議を無視してテレサに発言を促した。

「ではお言葉のままに・・・。」テレサはガトランティスの軍事上の現状とその行き詰まり、それが及ぼす政治・経済への悪影響について語った。

そして現在の力による略奪を止め、周辺星系国家との交易による共存・共栄を求めた。

「何をたわけた事を! 我等 ”ガトランティス” の ”始祖” は ”古き美しき海” を後に何万年も前から宇宙を一直線に
突き進み、その行く手を阻む者共を打ち払い、同時にそれが持てる資源を接収して生きる糧として来た、
今更、その生き方を変えろとはテレサ・テレザート、何様のつもりじゃ!」 一際高い玉座に座った ”大帝” と
大広間の床に片膝をついたテレサ・テレザートの間を取り持つ ”シファル・サーベラー” がテレサに錫杖代わりの鉄扇を
突付けて声高に糾弾した。
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「何も今すぐに全てを変えられるとは思っておりませぬ。 しかし、ガトランティスのあるべき姿だけは考えておく必要が
あると存じます。 
何せ、我等が ”始祖” は ”古き美しき海” を ”石もて追われた” と聞きます。
今後もそうした ”危難” が我等の行く手を遮らぬ保障は無いのですから。」テレサはサーベラーの剣幕を物ともせず
言った。

「減らず口を叩きおって!」テレサの言葉に憤るサーベラーに大帝は合図を送って呼び寄せた。

そして、大帝はサーベラーを呼び寄せると耳元で囁いた。

「これまでだ。」

それを神妙な面持ちで聞いたサーベラーは改めてテレサの方に向き直り口を開いた。

「テレサ・テレザートよ、お前はガトランティスの行く末など考えなくとも良い。

それは 至上、”ズオーダー大帝” 様がお考えになる事! そちは良き妾となる事のみを心掛ければ良い!」
サーベラーが合図すると隠れていた兵士達が飛び出し、テレサを取り囲んだ。

しかし、テレサは不敵に微笑むと二十名は居る兵士達など目に入っていないかの様にサーベラーに言葉を突付けた。

「サーベラー丞相殿、我は ”テレサ・テレザート” 、最早、シェザード族・第二王女、レティファン・クエシェザードでは無い!
 従って妾籍に入るつもりも無い!」

「この痴れ者を取り押さえよ!」サーベラーはテレサの言葉に怒りを抑えられなかった。

兵士達は大剣を抜き、テレサを取り囲んだが、彼女は慌てる風も無く、ビキニ・アーマーの上に纏っていたマントの左肩に
右手を置き、勢い良く留め金を外すと大きく振った。

するとマントは遠心力で広がり、更に眩い光に変わると兵士達の目を焼いた。

更にその光は凝集するとリング状に成り、テレサの手の中に納まった。

これこそテレサ・テレザートが駆使する最高霊操 ”輪廻の雷” である。

”霹靂” ガルダ・ドガーラ達と闘った時は ”光の鞭” 、”光の刀”の二形態しか見せなかったが今回は任意の部署で
リングを外し、左右に引き伸ばすと”光の長竿” に変形した。

テレサはそれを小脇に抱えて ”大帝” の玉座目がけて走った。

<奴(サーベラー)は大帝・暗殺を恐れ謁見の広間へ銃で武装した兵を配置して居ない、飛道具を持った兵が裏切る事を
警戒しているのか! 情けない奴等!>テレサは自分の左右を横走りに走り、行く手を塞ごうとしている衛兵達の一団の
動きに目を配りながら大帝の玉座目がけて走った。
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兵士等は銃で武装してこそ居なかったが剣技には非常に勝れていた。

凡庸な剣士の集団であれば取り囲んだ敵にバラバラに切りかかり、敵が使い手だった場合は部分的にいなされて囲みを
破られてしまうものだが、テレサを取り囲んだ一団は完全に一体化した戦闘行動をとって来た。

<こいつ等、出来る! 長引くとやっかいだ!>テレサは取り囲む兵を光の長竿の一端を握って振り回し敵兵の囲みに
隙間を作った。

飛び退ってテレサの攻撃をかわした精兵達であったが、次の瞬間、彼らは信じられないものを見た。

テレサは光の長竿を丸めて端同士を繋ぐと ”輪廻の雷” 本来の姿に戻すとその輪の中心に身体を潜らせ中に消えて
行った。

<シェザード族は ”空間・跳躍” の技に勝れると聞いていたが個人レベルでまで跳躍出来るとは思わなかった!>
サーベラーは己の読みが浅かった事に冷や汗をかいた。

<あのまま、”大帝” の懐に飛び込み、刃を振るわれていたらと思うとゾッとするわ!>テレサがいち早く撤退してくれた
のをサーベラーは幸いに思った。

しかし、次の瞬間、サーベラーは大事な事を思い出した。

「きゃつの乗って来た ”短艇” を押さえよ! すぐにじゃ!」サーベラーの命で兵士の一団が船着き場に辿り着くと老兵が
一人、本来旗艦に搭載されている ”短艇” の管理をしていただけだった。

しかし、そこにはテレサの短艇は影も形も無かった。

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その頃、ガルダ・ドガーラは随伴艦の一隻、ククルカン級宇宙駆逐艦の艦橋で焦れていた。

”大帝” の旗艦、巨大戦艦の護衛は多い、一隻位他勢力の船が混じっていても気付かれ難かった。

「会談は必ず決裂する!そうしたら直ぐに全速で此処を脱出する!距離を取り次第、最大空間跳躍でこの宙域を
去るのだ!」テレサの命令は明確だった。

しかし、そのテレサ本人が合流して来ないのだ。

多分、サーベラーはまだ、旗艦艦内でテレサを捜索しているであろう、まさか随伴艦内にテレサが自艦を隠していようとは
思ってもみないはずであった。

とはいえ、ぐずぐずしていれば ”大帝” 側に何れ発見されてしまうのは明白だった。

テレサを回収し次第、最大戦速で離脱、直ぐに空間跳躍に入る、それがベストの選択とドガーラは
判断していたのだが・・・。
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ドガーラは自らの駆逐艦を ”大帝” の座乗艦の途方も無い巨体を掠めるようにしてテレサとの最終的に打ち合わせた
空間座標に再度、持っていった。

だが、指定座標で待つこと1時間、テレサは現れなかった。

何らかの祖語が起こったのだ、こうした場合にはドガーラはテレサを捨てて離脱する様、命じられていた。

しかし、ドガーラにとっていくら ”主人” の ”命” とはいえ ”主人本人” を見捨てて自分だけが助かる事などガトランティス
戦士の誇りが許さなかった。

かと言って闇雲に ”大帝” の旗艦に駆逐艦一隻で突っ込んで行くほどドガーラは無鉄砲では無かった。

刹那の間思案した彼はある座標を航海士に指示し、彼の駆逐艦は ”大帝” の旗艦の脇を離れ、
空間跳躍に入って行った。

                                                                            

                                       191. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(9) → この項・続く

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長らくお待たせしました。 

宇宙戦艦ヤマト前史 "2199挿話" "大義の鎧" 再開させて頂きます。

大スランプに陥ったため、書けなくなってしまいました。

ブログのレポート頁を見るとこれだけ待たされても拙ブログを訪れてくれる人がいる事に感じ入り、書き掛けの190話を大修整して今回、やっと記事をアップ出来ました。

また今回のスランプの原因の一つである上橋菜穂子先生の " 守り人シリーズ " との出会いは沢山の課題を
私に課しましたが、得た物も多く、この出会いは僥倖として考えて往きたいと思って居ります。
(3月からNHKで大河ドラマが予定されています。全22話で " 守り人シリーズ " 3年渡って描くそうです。
 主演:綾瀬はるか )

BSで既にアニメ版は発表されていますが、これは " 守り人シリーズ " の序章、"精霊の守り人" までなのでそれ以降の
様々な大国小国を巻き込んだ騒乱や自然の驚異を大スペクタクルで最後まで描くそうですので
非常に楽しみにしています。
(アニメ版の出来が非常に良かったので実写での出来がどうか、少し気に成る所ではありますが・・・。)




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# by YAMATOSS992 | 2016-01-09 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「済まぬが、本艦 ”メテヲール” の推力では貴艦をこれ以上、次元断層の崩落口に落ちこまぬ様、支えるのが
精一杯じゃ、じゃが、更なる救援がこちらに向かっておる! しばし辛抱されたい。」テレサ・テレザートと名乗った
ガトランティス・女は自信に溢れていた。
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「救援感謝する!私はガミラス・マゼラン雲・辺境・・・。」メルダはそこで言葉を途切れさせた。

スクリーン上のテレサが右手を突き出し人差指を立てて素早く振っていたからだ。

<何のつもりだ? この女?>メルダにはテレサの意図が分からなかった。

「司令、お名前だけ、交換なさって下さい。 彼女は不必要な関係を作りたく無い様です。」クリフ・ラッド中尉がメルダの
耳元で囁いた。

「失礼、私はメルダ・ディッツ 階級は・・・。済まぬ、これは余計な事だったな。」メルダは今までの自分のやり方が何時でも
通じるものでは無い事を知り、複雑な気分だった。

「メルダ・ディッツ殿、貴殿らの奮闘、天晴れであった、我等の内でもこれだけ頑張れる者はそうはおらん!」テレサは
メルダ達の労をねぎらった。

「我等は ”敵”、次に合うのは戦場かもしれぬ、 互いの事情は知らぬままの方が良いと考えられるのか?」メルダは
心の内の疑問をぶつけてみた。

「そうだ、朋友に刃を向ける事は避けたいからな。」テレサは言葉を濁した。

「おおっ、援軍が到着したようじゃ、我等はまもなく脱出できようぞ!」テレサの声は弾んでいた。

「正面より高速で近づく物体あり、あ、急制動を掛けました。本艦と ”メテヲール” の正面で停止します!」 観測士が
報告した。
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<これは一体どうゆう事だ?> メルダはその艦影を見て訝しんだ。

「あれは最近、ネレディア・リッケ大佐の艦隊と交戦した大型戦艦ではありませんか!確かエネルギー・ビームを転送する
力を持ち、我々の射程外から攻撃出来るとんでもない化物だそうです。」 さすが、ラッド中尉は射撃管制官、敵の兵装にも詳しかった。

「それにしてはやけに接近してきていますね。 この距離なら本艦の陽電子ビーム砲でも充分打撃を与えられます。」
”メラ・ドーラ” 副長、フィレリア中尉が闘志を燃やした。

「慌てるな副長! ネレディア・リッケ大佐の報告にあった新型戦艦の前甲板には大型の多連装・砲塔があったはず、
やって来た艦の艦橋前には攻撃兵装は見当たらない。 同型艦では無い様だ。」メッキラ艦長は慎重だった。

「でも、腹部に抱えた巨大ビーム砲はエネルギー充填を済ましているようですが・・・?」副長はまだ不安を感じている様だった。

「心配するな、あれはビーム砲ではない、強力な牽引ビーム発射器の様なものだ。 テロンのヤマッテとの共同作戦にも
用いて成功を収めている。」テレサは安心材料を与える為に嘘を言った。

「 ”ヤマッテ” と共闘しただと! それじゃ ”コダイ” や ”ヤマモト” にも会ったのか!」メルダは自分でも訳が
解らなかったが、内心、心穏やかでは無かった。

「話は後じゃ、まずは我等と共にここから脱出する事に専念するのじゃ!」

”メテヲール” が牽引ビームを巻取り、”メラ・ドーラ” との相対距離をギリギリまで縮め、二艦が一艦に感じれる位に接近させた。

「脱出作戦についての説明を求める!」ルルダ・メッキラ大尉はガトランティスに全てを委ねる事に大きな不安を
持った様だ。

「差し出がましいぞ!メッキラ艦長、最早、我等に脱出の手段は無い! テレサ殿に全てをお任せするしか無いのが
分からんのか!」メルダはテレサがヤマトと共闘した事があると聞いただけでテレサに対する信用度を大きく増した。

<そうか、ヤマトと一緒に闘ったのか、ガミラスがヤマトと再び刃を交わしたのは私の知る限りではバラン星での
離反艦隊との戦闘だけだ。 しかもあの戦闘にガトランティス軍が加わっていたと言う報告は聞いていない。 
とすればヤマトと組んで一体、 ”誰” と闘ったのだ? まだ未知の敵がこの宇宙には存在しているとでも言うのか?>
メルダの心に暗い物が渦巻いた。

「これより本艦と貴艦を纏めて安全宙域まで空間跳躍させる。 多少の振動を伴うが危険なものでは無いので辛抱して
欲しい。」テレサは脱出策を少しだけ明らかにした。

「空間跳躍! それはガミラスで言うゲシュタム・ジャンプか! 貴艦はともかく本艦はジャンプするには崩落口の内に
入り過ぎている!」メルダはテレサの思惑を図り切れなかった。 

「大丈夫じゃ。”ガウ・ルーガル” の投射型・空間跳躍装置は跳躍機関の故障した ”ヤマッテ” を一万光年の彼方まで
飛ばして戦禍から脱出させた実績がある! 信用せい!」テレサは右手の握った拳の親指を立てて見せた。
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<あのサインは確かに ”テロン” のもの! では今の話に嘘偽りはない・・・!>メルダはガトランティスの科学力が
ガミラスのそれに勝っている事を認めるのは辛かった。

「メルダ殿、”ガウ・ルーガル” の用意は全て整った、これから貴艦と本艦を同時に投射・空間跳躍させる、跳躍距離は
安全を見て一光年とする! 了解か?」テレサから最後の確認が来た。

「テレサどのに全てをお任せする! この救援がそちらにとっても難しい、困難な物である事は想像に難く無い、
一番救出の確度の高い方法を取る物と信じている!」メルダはテレサに微笑みかけた。

「委細承知! それでは作戦終了まで通信が切れるので宜しく!」テレサがマントを翻すと通信に使っていたスクリーンの
画面が暗くなり何も写らなくなった。

************************************************

その頃、”ガウ・ルーガル” のブリッジでは新米の ”火炎直撃砲” 砲手がいきなり応用編を押し付けられて戸惑っていた。

<俺は敵を殲滅する為に ”火炎直撃砲” の訓練を積んで来たんだ。 断じて敵を助ける為じゃない!>まだ若い砲手は
先のヤマトとの共闘には参加して居なかったからこの救助の意味が分からないのも当然だった。

「ヤッシュよ。この任務が不満か?」やたらグズグズ照準作業を進める若い砲手は後ろから声を掛けられ驚いて
振り向いた。

そこには ボ・ルドウ侍従長 が険しい顔をして立っていた。

「侍従長! 私の同胞は大勢ガミロンの青虫共に殺されています! あなただって御家族の大半をガミラスに
奪われたはず!悔しくは無いのですか!」ヤッシュと呼ばれた若い砲手は不満をぶちまけた。

ボ・ルドウは照準器に写った ”メテヲール” を指差して言った。

「こちらはシェザード族の旗艦 ”メテヲール” 我等の指導者 ”テレサ・テレザート” 様が座上して居られる。」

そして次にメルダの座乗艦、 ”メラ・ドーラ” を指差して言った。

「こちらはお前の憎むガミラスの船だが遭難した仲間の船の乗組員を満載している。」

「それが何か?」ヤッシュにはボ・ルドウの意図が分からなかった。

「これだけ接近した二隻の片方だけを ”火炎直撃砲” 攻撃する腕がお前にあるのか?と聞いておる!」ボ・ルドウは
ズバリと切り込んだ。

「しかも相手は古への ”星の海往く船乗りの約定” に基づいて救援要請をして来たのだ。
これを見捨てるは恥だとは思わぬのか! 馬鹿者め!」

「古への何とかなぞ私の知った事ではありません! 更に、巡洋艦を二隻同時に ”火炎直撃砲” で空間跳躍させる方が
もっと自信がありません!」ヤッシュはつい本音を言ってしまった。

「情けない事を申すな。 何、わらわが伝えた通りに砲を操作すれば良いだけじゃ。」作業の遅れを心配した
テレサが通信に割り込んで来た。

「はっ、テレサ様、仰せの通りに!」ヤッシュは照準器を覗く眼を鋭くした。

「照準・完了しました。 カウント・ダウンは省略します!」ヤッシュは転送の時を告げた。

通常なら行うカウント・ダウンを省略したのは何時また次元・崩落が起きるか、分からないからだった。
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いきなりブラック・アウトした各スクリーンに恐慌を起しかけた ”メラ・ドーラ” の艦橋だったがメルダはガッチリと腕を組み、
ただ前方の空間を見つめていた。

司令の不動の姿勢に部下達も落着きを取り戻し任務に戻った。

幾許も無く計器は回復し、艦橋の前方上に備えられた大型のスクリーンにも通常空間が映し出されていた。

「現在位置を掌握、次元断層から約一光年離れる事に成功しました!」探査主任がはずんだ声で報告した。

「 ”メテヲール” はどこだ? 一緒に脱出したはずなのに姿が見えぬが・・・?」メルダは恩人の消息が気懸りだった。

「”メテヲール” から通信です。」通信士が伝えた。

メルダが接続を促すとスクリーンに ”テレサ・テレザート” の姿が映し出された。

「おおっ、テレサ殿。貴君らの手腕、奇跡の様だった。 古への”星の海往く船乗りの約定”に従って戴き、感謝する、
有難う!」メルダを始めとする ”メラ・ドーラ” の艦橋にいた一同が揃って頭を下げた。

「何、私は先祖から受け継いだ ”理” に従って行動したまでの事、この後、メルダ殿がもし ”困窮している船乗り” に
出会ったなら手を差し伸べてやって欲しい。」テレサは多くを望む事はしなかった。

「テレサ殿、この大恩には不足だが細やかながら ”宴” を用意させて貰った。 受けては貰えぬだろうか?」メルダは
ガトランティス人と平和理に接触出来る機会を喜んでいた。

しかし、テレサの返事はつれないものだった。

「諸君を信用しない訳では決っして無いが・・・。」

テレサは急ぎの旅の途中だと言うのだ。それも ”有力者との婚礼の為の見合い” に向かう途中だとメルダに告げた。

テレサの座上する ”メテヲール” は既に次の空間跳躍に入った旨、探査主任から報告があった。

もはや、”メレ・ドーラ” の探知システムでは捉えられない遠距離の宇宙空間にかの船は溶け込んで往った。

それを聞いたメルダは ”古への星の海往く船乗りの約定” が如何に大きな影響力を持つ物なのか、
改めて実感していた。

                                         190. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(8) → この項・続く

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# by YAMATOSS992 | 2015-07-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(7)
 ”KD-288” は乗組員を全員 ”メラ・ドーラ” に移し終えると、牽引ビームの接続を切られ次元断層の奥に消えていった。

”メラ・ドーラ” の艦橋にいた全員が消えゆく僚艦に敬礼(ガミラス式)で別れを告げた。

「さぁ、これで安心してこの場を離れられますね。」”メラ・ドーラ” 副長、フィレリア中尉が喜びの声を上げた。

「まだ安心は出来ん、”地獄の釜” がすぐそこに口を開けているんだぞ!」艦長のメッキラ大尉は慎重だった。

「兎も角、”KD-361” を先行して脱出させろ、急加速は厳禁だぞ、断層・崩落を助長しかねん。」メルダも慎重な脱出を
指示した。

徐々に加速を強めて ”地獄の釜” からの離脱を試みる ”KD-361” 、しかし ”KD-361” が崩落口から充分安全な距離を
取る前に大規模な崩落が起こり ”KD-361” は次元断層に飲み込まれそうになった。

「牽引ビーム照射! ”KD-361” を支えろ!」とっさにメルダは ”KD-361” を牽引ビームで支える命令を発していた。

しかし、今度起こった次元断層の崩落はメルダ達が経験した物の中で最大であり、 ”メラ・ドーラ” まで”赤い咢”に
引き込まれそうになった。
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「司令! 今まで有難う御座いました。 牽引ビームを切って旗艦だけでも脱出して下さい。」 ”KD-361” 艦長である
エル・ギャロ大尉が悲痛な声で ”メラ・ドーラ” 脱出を促した。

「いかん! ここで貴様達を見捨てては何の為に今まで皆で生存の努力をしてきたか分からなくなる!」メルダは何が
何でも全員の生還を諦めるつもりは無かった。

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 しかし悪い時には悪い事が重なる物で先に投棄した ”KD-288” の質量が次元断層の崩落に拍車を掛けてしまった。

”メラ・ドーラ” はそれまで通常空間に位置して牽引ビームにより ”KD-361” を ”崩落口” に落下しない様に支えて
来たのだが、次元断層の ”崩落口” 拡大によって ”メラ・ドーラ” 自体もその ”縁” に辛うじて引っ掛かっている状態に
なってしまった。

「いけません! このままでは共倒れです! 戦場では負傷兵にかか患って徒に健全な戦力を消耗するのは ”愚将” の
する事です! 御理解下さい 司令!」ルルダ・メッキラ大尉が詰め寄った。

「先程、古の ”星の海往く船乗りの理” を信じて我々は ”次元断層・発生” の警告を放った。
その我等がその ”理”を蔑ろにして "同胞” を見捨てては我等の ”身体” は助かっても ”心” は死ぬ!」メルダにとって
名誉は何にもまして重要なものだった。

「 ”KD-361” 、機関が無事なら再度、機関・出力を徐々に上げ、脱出を試みよ!」メルダは決して ”仲間” を見捨てる
気は更々無かった。

「私はテロンの ”ヤマッテ” に僅かの間だが乗艦を許され、旅を共にした事がある・・・。」メルダは部下達に ”ヤマト” の
旅について語った。

彼等は我々ガミラスの攻撃を受けその母星は ”瀕死” の状態になっていた事。
 
そこへイスカンダルからの使者、ユリーシャ様がスターシャ猊下からの技術供与と救済の可能性を届け、
彼等は使者 ”ヤマッテ” を派遣し、片道十六万八千光年、往復三十三万六千光年の旅を遂行する事を決断した事。 

三十三万六千光年、これはガミラス人ならゲートが使えなければ決して実行しない距離である事。

しかも当初は和解していないガミラスの猛攻を受けつつの航海を覚悟していた事。

”ヤマッテ” の旅はいくらガミラスの内政に混乱があったとはいえ、”宇宙の狼” ドメル将軍の猛攻を潜り抜け、
一万隻の艦隊が集う、バラン・ハブ・ステーションを破壊しつつ、自らはゲートを使って追手をかわすなど尋常な物では
無い、まるで神がかったものだった事。
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「そう、彼等は どんな時も決して”諦め無かった”、だから "明日” を手にして今、帰還の途にある。
だから我々も決して諦めてはならない、最後の一ゲックが尽きるまで冷静に状況を見、可能性を探り、それを全力で
実行するのみだ。」メルダは ”ヤマト” から教えられた ”負けじ魂”を 部下達に語った。

「成程、”ヤマッテ” を ”バレラス” に導いた " 共闘者は貴女でしたか。」クリフ・ラッド中尉はメルダの体験について
良く知っていたが、知らん顔を決めていた。

「別に ”裏切者” とはっきり言っても良いのだぞ…。しかし、私は家名を汚す様な真似をしたとは思っていない!」
メルダはヤマトでの旅、特に協力して切り抜けたバレラス戦の内に誰憚る事の無い、強い ”正義” を感じていた。

「あの戦い(バレラス戦)は理不尽な暴力を排する為の物でした。
裏切者はデスラーの方です! あんな男を総統と呼んで崇めていた自分が恥ずかしい・・・。」ルルダ・メッキラ大尉が
メルダを擁護した。

「もちろん、私だってそう思いますよ。」ラッド中尉はヘラッと調子を合わせるとメッキラ艦長に目配せした。

「 ”KD-361” に再度、牽引ビーム照射、本艦は機関・出力を徐々に増して脱出を試みる、観測士、次元断層の
崩落状況を逐次報告、大きな崩落の兆候を掴んだらフェーズ3でゲシュタム・ジャンプ、脱出を試みる! ”KD-361”も
本艦の操艦システムにリンクし、脱出・ジャンプのタイミングを合わせろ!」メッキラ艦長は大胆な脱出手段を命じた。

メルダはラッド中尉が敢えて憎まれ役を引き受けてメッキラ艦長に思い切った作戦を取らせたのに気付き、
<この男、何者だ?>と不審に思ったが今は脱出に専念すべきだと思い直し艦長の采配を見守るに止めた。

************************************************

 メルダの指揮するマゼラン雲・外縁・偵察・艦隊の生き残りはその生死を掛けて次元断層脱出に挑んでいた。

出力を強引に上げての緊急・離脱は更なる次元断層・崩落を招く恐れがあり、行う訳には行かなかった。

辛うじて通常空間に留まっている ”メラ・ドーラ” が微速でそろそろと次元断層から離れ、次に牽引ビームを
手繰り寄せて航宙駆逐艦 ”KD361” を次元断層開口部から離脱させる方法しか無かったのだ。

それは一時の休みも許されない緊張した時間で疲労した将兵には永遠とも感じられる長いものであった。

”メラ・ドーラ” が完全に通常空間に戻る事に成功し、牽引ビーム出力をあげ、”KD-361” を手繰り寄せようとしたその時である、更なる次元断層の崩落が起こった。

しかも今度は完全に ”メラ・ドーラ” も完全に飲み込む大規模な崩落でもはや一刻も早くゲシュタム・ジャンプしなければ
絶対助からない状況だった。

「ゲシュタム・ジャンプ、フェーズ3を適応!」今度はメルダも迷わず命令を下した。

航宙・駆逐艦 ”KD-361” も航法システムをリンクさせていたので同時に脱出出来るはずだった。

しかし、その作戦はとんでもない所から大きく崩れた。

「済みません! 司令、本艦の質量補正に誤りがありました、今のままではジャンプ不能です!」航宙士が報告した。

<クソッ、”KD-288” から救出した乗組員の合計・体重を加算し忘れたのか!>あまりの初歩的ミスについメルダも
きつい目で航宙士を睨んだ。

「直ぐに全員の体重合計の補正計算をやり直せ! そして一刻も早いジャンプ態勢を作れ!」メルダは航宙士を
叱責するのを後回しだと考えた。

「 ”KD-288” を自沈させた今、航法システムのリンクが使えません! "KD-288” の乗組員体重合計は実測するしか
方法はありません!」航宙士は完全にパニックに陥っていた。

「落ち着け! 艦長、”KD-288” の乗組員の艦内服に付いて居るバイタル・センサーをメイン・コンピューターに接続! 
ゲシュタム・ジャンプに必要なデータを取得しろ!」メルダは執拗なまでに生きる努力を諦め無かった。

 ”KD-361” は ”ゲシュタム・ジャンプーフェーズ3” の指示が ”メラ・ドーラ” から、航法システムのリンクで伝えられていたので自動的に ”ゲシュタム・ジャンプ”に入り、この場から脱出して行った。

但し、その ”ジャンプ” が成功し、通常空間に戻れたか否かはまだ次元断層の ”赤い咢” に捕らわれている
”メラ・ドーラ” には知る由も無かった。

「本艦はゆっくりだが着実に次元断層内に引き込まれつつある。 だが質量補正計算が間に合えば我々は助かる!」
メルダは中央コンピューターの端末モニターに写る目まぐるしく変わる数列を食入る様に見つめた。

「駄目です! 落下速度が加速度的に増えています! 補正計算、間に合いません!」観測士が絶望的な叫びを上げた。

「まだだ、我々はまだ生きている! 諦めるのはまだだ!」メルダは ”ヤマトのオキタ”なら発っしたであろう、言葉を
全乗組員に訴えた。

<あの ”漢” はこんな ”恐怖” を全て呑み込んで ”ヤマト” を率いていたのか・・・それが判っただけでも満足だ・・・。>
メルダは心の内に ”敗北” を認めようとしている自分がいる事に気が付き自責の念に駆られた。

「通信士! 先程 "放送” した ”次元断層・発生の警告” を再度 "放送” しろ!早く!」メルダはクリフ・ラッド中尉の
進言した 古の”星の海往く船乗りの約定” に再度賭けてみるつもりなのだ。

「落下加速度、本艦の補助エンジン加速度の1.5倍を超えました! どんどん増えます! もう駄目です!」航法士が
舵輪から手を離し顔を手で覆ってその場に崩れ落ちた。

ガラガラと空回りする舵輪、しかし、それをしっかり掴み、空回りを止めた者がいた、艦長だった。

彼女はメルダを肩越しに振り返ると微笑んで見せた。

<地獄の底まで付き合ってくれるのだな、メッキラ大尉・・・。有難う。>メルダも無言で頷いた。

火器管制席にメルダが目をやるとラッド中尉も穏やかな顔でコンソールを見つめていた。

<私は部下に恵まれた・・・。 みんな、有難う!>メルダは声には出さなかったが最後まで自分に従ってくれた
乗組員・全員に感謝した。

次第に失速し、面舵を切る ”メラ・ドーラ” 、加速度的に落下速度を増して行く。

<いよいよ最後か・・・。>メルダは言葉には出さなかったが心の中では覚悟を決めていた。

その時である、 ”メラ・ドーラ” は大きな衝撃に見舞われ、艦橋に立って指揮していたメルダは床に叩き付けられた。

しかし、その衝撃は一瞬で収まり、艦橋スタッフ、特にメルダやメッキラ艦長の様に立って任務を遂行する者達は床に投げ出された身体を起して姿勢を整えた。

「艦長! 本艦の落下速度が殆ど ”0” に成っています!」航法士が報告した。

「 ”牽引ビーム” です。本艦に向けて ”牽引ビーム” が照射されています!」探査主任が驚くべき報告をした。

<馬鹿な!? 今の本艦に ”牽引ビーム” を届かせるには自艦も ”次元断層の裂け目” に落ち込む位、深く降りなければ
ならないぞ! 一体誰が・・・。>メルダはあまりの事に頭が混乱していた。

「通信が入っています!」通信士が報告した。

< ”KD-361” め、再び戻って来よったか?>メルダは眉を曇らせた。

しかし艦橋の大スクリーンに写し出されたのはガミラス人では無かった。

<あの肌の色は ”ガトランティス” !>メルダはあの ”約定”が本当に為された事に驚きを感じた。
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「我が名は ”テレサ・テレザート”、古の ”星の海往く船乗りの約定” に基づき、救援に参った。」その ”ガトランティス人” はまだ幼い少女だったがその風格はまるで女王の様だとメルダは感じた。


                                         189. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(7) → この項・続く
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# by YAMATOSS992 | 2015-07-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)

 「はっ、発言の機会を与えて頂きこの老骨、感謝致します。」彼はもったいぶった話し方をした。

「司令は古から伝わる”星の海を往く船乗りの理”を御存じでしょうか?」彼は随分古い事を持ち出して来た。

「ああ・・・。確か、”船乗りは船乗りを決して見捨てない、見捨ててはならない。”だったかな?」メルダは記憶の底から
古い言伝えをすくい出して答えた。

「クリフ・ラッド中尉、あなた、まさか”ガトランティス”に助けを求めるつもり! そんなの不可能よ!」メルダの副官で
航宙軽巡洋艦”メラ・ドーラ”艦長のルルダ・メッキラ大尉が異を唱えた。

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「まぁ、待てメッキラ大尉、私もこの古い”理”には何度も助けられた。
最も相手はガミラスの恩人、”テロンのヤマッテ”だがな。」メルダは短かったが濃密だった彼等との旅に想いを馳せた。

「テロン人とガトランティス人ではその”魂の高貴さ”が違います。 ガトランティスは所詮”蛮族”です。」メッキラ大尉は
ヤマトのバレラス戦時、バレラスの郊外にある軍港におり、デスラーが落とした第二バレラス633工区をヤマトが波動砲で
迎撃してくれなければ大多数のガミラス臣民と共に死亡していたはずだったので恩義を感じていて当然だった。

「しかし、テロン人はイスカンダルのスターシャ猊下によって技術供与されなければ自星系からすら出れない程度の文明
しか持って居なかったと聞きます。
また、”波動エネルギーの兵器転用”の件でスターシャ猊下の不興を買ったとか、ガトランティスは確かに好戦的では
ありますが、”波動エネルギーの兵器転用”を行う程、”野蛮”ではありません。
交渉の余地は充分にあると自分は考えます。」

「何を言う、ガミラスの恩人、ヤマッテやテロン人を”野蛮人”扱いするとは! ガミラス皇室、女皇ユリーシャ様に
対しても”不敬罪”になるぞ! 言葉を控えろ! 中尉!」 メッキラ大尉は自分の価値観を覆され、ラッド中尉に
今にも飛び掛らんばかりだった。

「まぁ待て二人とも、ラッド中尉、君の案を取るとして実際にはどの様な方法でガトランティスと交渉するつもりなのだ?」

メルダはこの偵察艦隊の司令官として最早、ラッド中尉の案に賭けるしかない事を強く感じていた。

「超空間・通信・バンドを広域帯に設定してこちらの窮状を”放送”するのです。」ラッド中尉は至って常識的な答えを
返した。

「ハッ、そんな事したら血に飢えたガトランティス軍が押し寄せて来るだけだ! 私は反対です!」 メッキラ大尉は
ラッドの中尉”無差別・広域・救援要請放送”に強く”異”を唱えた。

「こちらの”状況”を詳しく説明する必要はありません。 ただ一言、”古への船乗りの約定に従いて救援を要請する。”と
伝えれば良いのです。」ラッド中尉の目は輝いていた。

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<この男、妙に”自説”に確信を持っている・・・。 過去に何かを経験しているのか?>メルダは中尉の進言を取り上げる事にした。

「よし、救援要請を”広域・超空間・通信バンド”にて”放送”する! 文面は”こちらガミラス航宙警備艦隊、大規模次元
断層発生にて遭難せり。 近傍を航行中の船舶は厳重に注意されたし! この警報は”古への星の海を往く船乗りの
約定”に基づき発する! ” だ。 後は位置情報を付け加える必要があるな。」メルダは明確な指示を出した。

「はぁ? 具体的な”救援・要請”はしないのでありますか? これでは我々の位置情報を伝えるだけで終わって
しまいます。」 ルルダ・メッキラ大尉は更に反発した。

「さすが総司令官の御令嬢、”古への星の海を往く船乗りの約定”を御存じなのですね」 ラッド中尉は感心した。

<私がガミラス史上初のテロン艦ヤマトの捕虜に成ったから”知った”とは・・・言えないな。>メルダは心の内で
苦笑した。 ( 過去記事・「勇者の砦」、「烈光の使者」参照。)

**************************************************

 「行く手を阻んでいた”超大規模次元振・次元断層”は崩落は続いていますが基本的には収束の方向です。」 巡航艦
”メテヲール” の観測士が報告した。

「航行は可能か? 危険は回避出来るのだろうな? 三日の遅れは取り戻せるのか?」”メテヲール”の艦長はかなり焦っていた。
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「ガルダ・ドガーラよ、”迅雷の戦士”よ、焦っても無駄じゃ! 遅延は遅延、理由の如何を聞いてくれる相手では
あるまい。」ドガーラの後ろから凛とした声がした。

「テレサ様。 この様な俗な場所に参られては困り申す、あなた様は”大帝の妻”に成られる御方であられます。
到着まで自室で御寛ぎ下され。」ドガーラはボ・ルドウ侍従長からテレサの補佐を引き継いでいた。

「ガミラス艦隊の通信を傍受! 内容は平文、”超大規模・異次元断層”の発生を報じるものです、この艦隊は既に次元断層に飲み込まれ遭難した模様・・・なのですが・・・。」 通信傍受を報じた通信士は言葉を濁らせた。

ドガーラには判らなかったようだが、テレサは鋭い眼差しを通信士に向けるとその目力に押された通信士は報告を
続けた。

「後、”この警告は”古への星の海を往く船乗りの約定”に基づき発する! ” とか、訳の分からない事を
言っています・・・。」通信士の言葉が終わるとテレサはその通信を発した者の冥福を祈る様に瞑目した。

しかし、次の瞬間、閉じてた目をカッと開くとその通信源の特定と艦長には艦隊の転進を命じた。

「どうされました? ”大帝”は痺れを切らしていますぞ、これ以上遅れては”御命”に係ります!」
転進命令に従いながらも艦長は疑問を口にした。

テレサは ”古への星の海を往く船乗りの約定” が ”船乗りは決して同じ船乗りを見捨てない” 事である事を説明し、
それは非戦闘時であれば敵対勢力同士であっても適合される事を話した。

「しかし、ガミラスは明らかに我等の ”敵” 。 今更 ”船乗りの絆” 等と言われても承諾しかね申す!」 ドガーラは納得
しなかった。

「”大帝”の・・・”敵” であろう? ガミラスの勢力圏内に無理やり艦隊をねじ込んだのは ”大帝” いや ”サーベラー” の
采配、ガミラスは第三勢力となった我等の ”敵” では無い! ここで彼等を見捨てたら我等が ”大帝” と袂を分かつ
”大義” も失われてしまう! 急げ、一人でも多く救い上げるのじゃ!」テレサはその名(愛満つる者)に相応しい行動を
取る様になっていた。

「おっと、忘れる所だった、通信士、族長に連絡! ”ガウ・ルーガル” が必要になるかもしれん。 出動を要請して
おいてくれ!」”ガウ・ルーガル” は ”火炎直撃砲艦” である、当然、部族の保有艦艇では重要な位置を占める。

テレサは何気なく命令したが、先の ”レティファン・クエセジャード姫” の逃走劇に使用されたのは
この逃走に ”姫”と”部族” の命運が賭けられていたからだ。

しかし、あのガミラスの救出に、この ”虎の子” を使う事の意味を艦橋にいる部下達は理解出来なかった。

「テレサ様! ”ガウ・ルーガル” を呼ぶのはガミラスと事を構える時の用意で御座るか?」ドガーラはガミラスとの戦闘を
本気で望んでいる様だった。
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<まぁ、旧来の戦闘に明け暮れていた時代の性癖は簡単には治らん・・・か。>テレサは苦笑しつつ、一旦、自室に
引き上げた。

**************************************************

救援要請を超空間通信・広域帯バンドで流し続けながらメルダ達は別の生存の可能性を模索していた。

「本当に大丈夫でしょうか? この空間を宇宙服だけで移動するなんて無謀です!」メッキラ大尉はメルダが命じた
次の作戦に異を唱えた。

「危険は承知だ。 幸い、”KD-361” も本艦もゲシュタム機関は好調で ”KD-288” を支え続ける事に何の問題も無い。
しかし、エネルギー供給には問題が無くとも乗組員の生命維持に必要な ”食糧” は有限だ。
"水" と ”空気” も循環して使用しているとはいえ、100%の再生は出来ない僅かだがその量は確実に減少している。」
この足止めが後、数か月も続けば艦隊は ”飢え” と ”酸欠” で全滅してしまう事をメルダは艦隊の全員に説いた。

「 確かに ”KD-288” の機関が修理不能と判った今、乗員を "KD-361” と ”メラ・ドーラ” に分乗させ、移乗に成功したら
無人になった ”KD-288” を自沈・廃棄するのが正しい判断です。」ラッド中尉は賛成した。

「しかし、次元崩落中の危険な空間を遊泳させるのは無理があります!」メッキラ大尉は強硬だった。

「それは理解する。大尉。 指揮官・先陣だ、まず私が遊泳して ”KD-288” まで乗組員を迎えに行く。」メルダは
久し振りに愛用のパイロット・スーツに着替えようとした。

「お待ち下さい。 司令、貴女は航宙艦隊・提督、ディッツ様の御令嬢です。 こんな生命の保証の無い任務は我々に
お任せ下さい。」メルダのお目付け役でもあるラッド中尉はメルダの蛮勇を諌めた。

「駄目だ、これは最高責任者が行うべき仕事だ。」メルダはそう言い放つと愛用のパイロット・スーツに身を固め、
次元振による空間崩落の続く危険な空間に出ると、”KD-288” を目指した。
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メルダの眼前には崩落が続く次元断層の開口部が不気味に赤い光を放って広がっていた。

” KD-288 ” に着くと副長が十数名の乗組員を取りまとめて待っていた。

「私は ”KDD-288” 副長、トレンス中尉であります。メルダ司令、自らの救援活動恐れ入ります! 
我々、乗組員十六名は全員感謝しております。」と副長は申告した。

「よし、一人づつ私の持って来た救助索を使って階級の低い者順に”メラ・ドーラ”に移乗してもらう。
それで良いな? トレンス中尉。」メルダは救出方法の段取りを確認した。

今までデスラー政権時のガミラスでは上官が部下の命を踏み台にする事など平気な輩が跋扈していたからだ。

「はっ、ザーベルク! 問題ありません。」トレンス中尉はメルダの命令を当然の如く受け入れてくれた。

「しかし、艦長はやはり最後にするのでしょうか? 病人ですから特例で先行脱出させる訳には行かないでしょうか?」
副長は遭難の重圧に精神を押し潰されてしまった艦長の事を気遣った。

「ウム、」メルダは副長の足元にうずくまる艦長の肩に手を掛けるとその階級章をむしり取った。

<クソッ、今度の司令は度量のある方だと聞いていたが所詮、中央の人間、現場で命を擦り減らす者の気持ちは
分かってはくれないのか!>メルダの冷酷な仕打ちにトレンス中尉は怒りを覚えた。

しかし、メルダは二人に背を向けたまま言った。

「トレンス中尉、そこにいるのは階級章も付けていない二等兵だ。 直ぐに救助索を与えてやり給え。」

「はっ?」副長はメルダの言った言葉の意味が分からなかった。

「階級章紛失の件は私の方で処理しておく、君がその”二等兵”を責任を持って”メラ・ドーラ”に送り届けてくれたまえ。」
メルダの口許は呼吸器マスクに覆われており、表情は読めなかったが目元は確かに微笑んでいた。


                                         188. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(6) → この項・続く

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# by YAMATOSS992 | 2015-07-11 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)

 「随分、遠くまで遣って来ましたね。」副官のルルダ・メッキラ大尉がゲシュタム・ジャンプ終了後、目の前に広がる
小マゼラン雲外縁部の様子を見て要った。

「ああ、だが、ここまで出張って来たと言うのにガトランティス軍の欠片も見つからないとはどうした訳だ? 
奴等、ガミラス領内への侵攻を諦めたとでも言うのだろうか?」小マゼラン方面、ガトランティス軍の動向を偵察する任を
帯びたメルダ・ディッツ少佐は眉をひそめた。

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「そうですとも、我等、ガミラスは無敵です!」ルルダ大尉は大きく張った胸乳をドンと叩いた。

それを見てメルダ少佐は皮肉を言った、「一万隻も軍艦が居たくせにテロンのヤマト一隻を打ち取れなかったのにか?」

「そ、それは・・・。」ルルダ大尉が反論しようとしたその時である、航路探査主任から緊急報告が入った。

「次元振を確認、大きいです! それも近い!」その報告の声は悲鳴に近かった。

「次元断層か! すぐさま緊急ゲシュタム・ジャンプ!フェーズ3で現宙域を離れる! 艦隊各艦に通達!」メルダ少佐の
命令は冷静だった。

ガミラスでは次元断層に遭遇した場合など緊急にゲシュタム・ジャンプをしなければならない場合、
艦隊内で必要な諸元を一々遣り取りして決めていては緊急事態に間に合わないので予め諸元を決めておき、いざ事が
起こればその程度に応じてフェーズ1~フェーズ3の三段階のジャンプ距離を選び危機を回避する方法を執っているの
だった。

今回、メルダが選んだフェーズは”3 ”、約3光時の短距離・ジャンプである。

それまで惑星系を飲み込む程大きな次元断層は観測された事が無かったから彼女の判断は適切だったと言える、
しかし発生した次元断層は思いの外、発生場所がメルダの艦隊に近く、艦隊がゲシュタム・ジャンプに移行する前に
配下のクリピテラ級航宙駆逐艦3隻が”赤い咢”に引き込まれていった。


メルダの乗ったケルカピア級航宙軽巡洋艦と2隻のクリピテラ級航宙駆逐艦は危うく難を逃れたかに見えたが
実際の危機はまだ去って居なかった。

「駄目です! ジャンプしたにも関わらず、”赤い咢”の吸引力はまだ働いています!」航路探査主任は今までに無い
現象にすっかりパニクッていた。

「落ち着け! 航海手!再度、ゲシュタム・ジャンプで現空域を離れる、今度はフェーズ”1 ”だ! 
僚艦にも命令・伝達せよ!」メルダの落ち着いた、しかし強い意志に裏打ちされた命令が艦隊内に平静を取り戻させて
行く。

しかし、運命の悪戯は再び好機をメルダ艦隊から奪い去った。

メルダ艦隊の残存艦はメルダの座上するケルカビア級航宙軽巡洋艦”メラ・ドーラ”とクリピテラ級航宙駆逐艦、
”KD-288”と”KD-361”だったが、”KD-288”が機関不調を起こしてゲシュタム・ジャンプ不能に陥ったのだ。

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「牽引ビーム照射! ”KD-288”の”落下”を支えろ! それと通信士!艦隊本部に救援を要請しろ!」淀みなく下される
メルダの矢継早の判断と命令はともすれば絶望に陥るしかない艦内に高い士気を保たさせていた。

<このお嬢さん、航宙艦隊総司令、ディッツ提督の一人娘だと聞いていたからどんな甘ちゃんかと思っていたが
仲々どうしてやるもんだ!>火器管制席に座った老士官は感心した。
(全種族的な心理操作によってイルダ・ディッツは居なかった事になっています。”イルダ・走る!”参照。)

「ディッツ、いやメルダ司令、艦隊本部と連絡が取れません! この次元断層の発生で空間が歪んでいる物と
考えられます。」

「よし、解った。 今の状態を維持する事は造作も無い。 次元振もそのうち収まるだろう。」通信士の深刻な報告にも
メルダは眉一つ動かさなかった。

 本来、有限のエネルギーしか持たない宇宙船は持久戦には不向きである、しかし波動エネルギーを用いた
波動エンジンは”真空中から無限にエネルギーを取り出せる”夢の様なシステムである。
(ガミラスのゲシュタム・機関も名前が違うだけで実質的に同じシステム。)

だから航行出来ず、かつ、次元断層に落込みそうな僚艦を牽引ビームで支えてもエネルギーが尽きる心配は無いので
現状を維持しつつ、次元断層による次元振が収まるのを待っていれば良いのだ。
(メルダはこの次元振は長くても一時間位で収まるだろうと推測していた。)

しかし、そんなメルダの予想を嘲笑うかの様に3日経っても次元断層の崩落は続き、次元振は一向に収まる気配を
見せなかった。

だが、それでもメルダは指揮官として絶対の自信を持って部下の前では振舞って見せていた。

<ここで私が”折れたら”雪崩を打って一直線に”破滅”へ向かう・・・、助けて!『古代』助けて!『沖田!』 >
幾らガミラス・最年少で”少佐”になったとはいえ、彼女はまだ二十代に成ったばかりの少女なのだ。

「司令・・・。”KDー361”から通信が入っています。」通信士がメルダの個室に連絡を入れて来た。

「よし! 繋げ!」メルダは顔の表情を直ぐに少女の顔から艦隊司令の顔に切り替えると通信接続を命じた。

「航宙駆逐艦 KD-361艦長エル・ギャロ大尉であります。 意見具申します!」デスラー統治時代には考えられない事で
あったがテロン艦「ヤマト」との接触によってガミラスでも一兵卒でさえ意見を言う機会が与えられる様になっていた。

もちろん、それを取り上げる、上げないは指揮官の裁量に任されており必ずしもその意見が通るとは限らなかったが、
それでもデスラー統治時代の盲目的に従うだけの軍務では無く常に自分の頭を使って戦う事が許された事は全軍の
士気を大きく上げる事に成功していた。

「よし! 意見具申を聞こう! エル・ギャロ大尉!」メルダは自分より十歳は年上の駆逐艦長に発言を促した。

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「はっ、それでは意見を述べさせて頂きます。 我が艦隊は今、次元断層の縁に居り、何時、引き込まれても可笑しく
ありません。
しかも僚艦の”KD-288”は機関不調を起こして航行不能に陥り、牽引ビームで支えてやらなければ次元断層に
落ち込んでしまいます。
しかし、幸いにも本艦の機関には全く異常がありません、絶好調です!
そこで本艦が”KD-288”を支え続けますので、司令は”メラ・ドーラ”単艦で脱出、救援を呼んで来て頂きたいのです。」
実直なベテラン宙雷屋らしい進言だった。

「有難う、エル・ギャロル大尉。 しかし、それなら貴官が救援要請に出、少しでも艦体の大きい本艦が”KD-288”を
支える方が理に適っている。」メルダ司令は若い自分を生かそうと考えたギャロ大尉の進言が嬉しかった。

しかし、メルダはその進言にはあまり意味の無い事に気が付き少し悲しかった。

<ガミラス艦艇の”跳躍制限”の秘密・開示は艦隊司令止まりになっているから彼が知らなくても仕方ない・・・か。>

”跳躍制限”の秘密・・・それはガミラス艦は単艦では長距離のゲシュタム・ジャンプが出来ないと言う事だった。

本来、”ワープ”や”ゲシュタム・ジャンプ”の行える艦の密集艦隊運用は効率的な方法とは言えない。

各艦、数光年の間隔を置いた網の荒い艦隊で敵地に侵攻し、反撃の有った、ないしは強い宙域に各艦が集結して
敵を叩く、これが本来の”空間転移”出来る技術を持った艦隊の運用の方法である。

ガミラスも勢力圏拡大を始めた当初はこの運用方法を執っていた。
(対ヤマト戦で中性子星”カレル163”を用いたドメル将軍の”罠”は正にこれ。)

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しかし、支配圏の拡大と共に各方面に派遣出来る艦艇の絶対数が不足する様になった。

もちろん、物理的な艦艇の数の不足はガミラスの工業力を持ってすれば補いが付かない訳ではなかったが、艦隊の
ソフト面、艦艇の運用に必要な人員の不足は如何ともしがたく、ガミラスに対する忠誠度の高い被征服民、
”二等ガミラス人”である”ザルツ人”を多用せざるを得なかった。

幸い、被征服民でも”ザルツ人”は矜持が非常に高く、征服者と言えど一度、忠誠を誓ったからにはそれを貫く事を誇りと
していたので安心して艦隊を任せる事が出来た。

しかし、デスラー政権の中枢部では純血主義が力を持っており、”二等ガミラス人”に対する不信感は根強かった。

そこで航宙艦隊司令部は艦艇の相互監視システムを導入した。

但し、これは個々の艦艇が常にお互いの挙動を監視すると言う士気を下げる方法では無く、単艦で出来る”ゲシュタム・
ジャンプ”の距離を一光年以下に抑えるが、二隻なら十光年単位、五隻なら百光年単位、
十隻集まれば重複・増幅効果で千光年単位の”跳躍”が可能になると言うものだった。

つまり反乱分子が艦艇を乗っ取り脱走を図っても一度に跳べる距離は一光年以下なので複数艦で構成された
追跡艦隊は簡単に逃走艦を捕捉、撃滅出来ると言うシステムなのだ。

(戦艦級は艦長以外に司令官クラスが座上する事が多い事もあり、このシステムはデストリア級重巡までしか採用されて
いない。
しかし、一度、航宙艦隊に組み込まれてしまうと戦艦と言えどその管制システム下に置かれ厳しく監視される事になる
のでイルダ達が惑星レプタポーダからディッツ提督を解放するのに使用したハイゼラード級戦艦は全くの新艦を航宙艦隊の管制システムの外で建造し管制システムとの接触を最小限に抑えて作戦を成功させた。)

だからガミラスの艦隊は常に密集隊形を使用し、そしてこれはこれから侵略する星系に対する強力な示威行動にもなり
支配圏の拡大に大きな力となったのだった。

だが、今のメルダ艦隊にとってはこの”跳躍・制限”は正に八方塞がりを現出してしまっていた。

<デスラー政権は”一等臣民”ですら信用して居なかったのだ。>メルダは”狂信”の恐ろしさを改めて実感していた。

<ヤマトと出逢わなければ私は今でもデスラーの先兵として多くの星の無垢の民を
虐殺し続けていたかもしれない・・・。>

メルダはヤマトの”独房”で交わした古代・進との会話を思い出して唇を噛んだ。

「司令! 火器管制官意見具申!」 野太い声にメルダが首をめぐらすとハイデルン大佐に良く似た老兵が
不敵に微笑んでいた。

「何だ? クリフ・ラッド大尉、妙案があるのか?」メルダはこの火器管制を担当する老士官が苦手だった。




                                         187. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(5) → この項・続く

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お待たせしました”大義”の”甲冑(よろい)” 再開いたします。

まだ本調子では無いので記事・UPが週刊に出来るお約束は出来ませんが、出来るだけ頑張ります。


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# by YAMATOSS992 | 2015-07-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)