ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 ヤマトと御召艦・ガウ・ルーガルはガトランティス本体から来たと思われる艦隊に追われていた。

<随分大規模な艦隊だな。この前出逢った転移ビーム砲艦が五隻もいる! ”姫様”はどうあってもガトランティスに
とって葬るべき存在の様だな。>真田副長はあんな化け物を一度に五隻も相手にする事など考えたくもなかった。
e0266858_10470518.jpg
「ウーム、ドム・ラルーサ(青)、ガイーダ・ロン(緑)、シャザム・フムセン(灰)、ストゥーパ・パイレン(緑灰)、後は大帝直属
艦隊のダウ・ズォーダ(標準色)・・・、主だった火炎直撃砲装備艦を全てかき集めて来よったか!」ボ・ルドウの顔は
引きつっていた。

しかし、当事者である”姫”は全く動じず、後ろから迫る艦隊をスクリーン上で眺めながら不敵に微笑み、「”烈華の陣”、
目標は追手の”火炎直撃砲艦全ての転送機腕!」と命じた。

「”姫”如何に”火炎直撃砲”と言えどまだ距離があり過ぎます。これでは命中しても”戦艦の主砲”程度の破壊力しか
期待出来ません!」ボ・ルドウは”姫”の命令に危険を感じたのだ。

「誰も”撃沈”しようなどとは思っておらん。 戦闘不能に追い込めば充分、無駄な殺生は避けたいからな。」”姫”は
そう言うと”火炎直撃砲”の操作レバーに右手を掛け、コンソールの上のダイヤルを細かく操作した。

なんとガウ・ルーガルの砲手は”姫”その人だった、そしてその操作ぶりからはかなりの熟練度が見て取れた。

一方、ヤマトでは”転移(ワープ)”での退避が出来ないので、ヤマト防衛の為、航空隊を展開させていた。
e0266858_21492097.jpg

また、兵装全てを使用可能にすると同時にあらゆるセンサー・探知機を働かせ敵の動向に目を光らせていた。

「”ガウ・ルーガル”を中心に空間転送波が五ヶ所に向かって広がって行きます!」新見情報長が理解不能と言った顔で報告した。

<五ヶ所? 敵の転送ビーム砲装備艦の数と同じだ・・・。ってまさか!>島航海長は”ボ・ルドウ”艦長の作戦が余りに
大胆な事に胆を潰した。

彼も流石に”ガウ・ルーガル”の砲手が”姫”その人だと言う事は知らなかったのだ。

**************************************************

<小娘め、この大艦隊を見て竦み上がっておる事だろう。>追跡艦隊司令、霹靂のガルダ・ドガーラはヤマト・ガミラスと
一戦交えた雷鳴のゴラン・ダガームの従弟だった。

「”ガウ・ルーガル”と同行している謎の艦はどうやらテロン艦”ヤマッテ”のようです。」情報士官が報告した。

「何!”ヤマッテ”だと!我が同胞の仇、まずそちらから始末してくれようぞ。さすれば”レティファン姫”も素直に言う事を
聞く事だろう。」ドガーラが各艦の”火炎直撃砲”の照準を”ヤマト”に切り替えようとした時である、通信士が
”ガウ・ルーガル”からの通信を受信した旨、報告した。

「お主と会うのは初めてじゃな? 名はなんと申す?」通信に出た”レティファン姫”は尋ねた。

「ははぁ、我が名は霹靂のガルダ・ドガーラ、ゴルエン族の客分で御座いまする。」ドガーラは相手が一応、王族なので
へりくだって見せた。

「それはお主の”真の名”か? わらわはお前の”真の名”を尋ねておるのじゃ。」”姫”は大胆な事を聞いた。

「・・・」ドガーラはシファル・サーベラーに尋ねられても答えられない”姫”の問答の答えに窮した。
e0266858_22113101.jpg

「どうした? 答える勇気が無いのか? 良くそれで戦士を名乗れる物だな。」”姫”の言葉はドガーラの怒りに
火を付けた。

しかし、彼が怒りを爆発させるまでもなく”ズシンッ”と言う音と共に”ダウ・ズォーダ”の艦橋は大きく揺れた。

「何事か!」”貴人”との通信中であるのも忘れ、ドガーラは大声で状況報告を求めた。

「右舷真横より艦首に被弾! ”火炎直撃砲”の転送システムは両舷とも大破!使用不能です!」”ダウ・ズォーダ”の
艦長が報告した。
e0266858_21171726.jpg
<何! 右舷だと? ”ヤマッテ”も”ガウ・ルガール”も左舷前方だ、一体誰が攻撃して来たと言うのだ?>ドガーラは
混乱していた。

「どうじゃ、お主の”真の名”しゃべる気になったか?」からかう様な”姫”の声がドガーラを現実に引き戻した。

「こちらにはまだ四隻の”火炎直撃砲艦”が御座いますぞ、”姫”こそ降伏なされよ!」ドガーラは虚勢を張った。

「ほう、そちらに”火炎直撃砲艦”はもう無いはずだが・・・。」”姫”の謎めいた微笑に被さる様に他の”火炎直撃砲艦”も
使用不能である旨、報告が入った。

「霹靂の勇者よ、悪い事は言わぬ。 人死にの出ない内に撤退せよ! 兵を無駄死にさせる者は将として
”失格”じゃ!」”姫”は最後通牒を突きつけると通信を絶った。

「本国より通信! サーベラー丞相閣下であります!」通信士は怯えていた。

この艦隊は”火炎直撃砲”の使用に長けたセジャード族の”姫”を追跡する」ためガトランティス中の”火炎直撃砲艦”を
掻き集めて編成されたものだ。

それが敗北したなぞと言う報告など出来る訳が無かったからだ。

「よし、繋げ!」しかし、ドガーラは敢えて通信接続を通信士に命じた。

<取るべき責任は取るしかあるまい。”完敗”したのは事実だ・・・。>ドガーラは放漫ではあったが卑怯者では無かった。

炎が燃え上がる様な3D映像がドガーラの前に出現したと思うとガトランティスの丞相、シファル・サーベラーの姿が
現れた。

「霹靂のガルダ・ドガーラよ。 逃げたレティファン・クエセジャード姫の捕獲の首尾はどうなって居る? 報告せよ!」
丞相はドガーラを詰問した。

「はっ、申し訳け御座いませぬ。”火炎直撃砲”の技術を使いこなす”ガウ・ルーガル”に我が艦隊は翻弄され、
撃沈された艦こそ出ていませんが主力の”火炎直撃砲艦”は五隻とも”火炎直撃砲”を使用不能にされ、圧倒的に不利な
状況に追い込まれております。」ドガーラは正直に現状を報告したが<もはやこれで・・・。>とばかりに自決用の
短剣の柄にその右手は掛けられていた。

「フム、従弟のダガームとは違い、戦士としての誇りは残して居るようだな。
それでは今一度の機会を与える。 配下の艦艇を上手く使うが良い。」それだけ言うとサーベラー丞相は火炎と共に
ドガーラの前から消えた。
e0266858_22141494.jpg

「命拾いしましたね。司令。」”ダウ・ズォーダ”の艦長が労いの言葉を掛けた。

<しかし、何故、我々の艦は攻撃を受けたのだ? こちらの”火炎直撃砲”の射程はまだ”ガウ・ルーガル”に届いて
居なかった、と言う事は”ガウ・ルーガル”の”火炎直撃砲”だって我々を攻撃出来る距離にまで近づいては居なかった
はず、やはり伏兵がいたのか・・・>ドガーラはダガームより知恵は回ったが、所詮は戦闘バカだった、
彼は無傷の空母群に艦載の偵察型デスバーテーターをビームの来た方向に向かって何機か、発進、探査を実施
させた。
e0266858_15575447.jpg
**************************************************

「ウーン、この前出逢ったガトランティスのビーム転移(ワープ)艦とは、その主兵装の使用レベルが格段に違う、
敵に回したらデスラーなんぞ子供、ドメル将軍でも互角に戦うのは難しいかもしれん。」”ガウ・ルーガル”の戦闘の詳細を
検討していた新見情報長が纏めたデータを見た真田副長は感心した。

「どう言う事です? 判り易く説明して下さい。」血の気の多い南部戦術長代理が尋ねた。

南部は今後の戦闘に生かすべく、瞬きする間も無く、追手の主力艦五隻を無力化した方法を知りたがった。

「それは”七色星団会戦”を思い出したら良い・・・。」真田副長は説明を始めた。

確かにガミラスのドメル将軍は”物質移送機”を使って宙母・艦載機をヤマトの周辺、思いもよらぬ場所に送り込んで攻撃
して来た。

艦載機が複数の別の場所に送り込めるなら一本の巨大なビームを別の場所に分けて送り込めても不思議は無い。

ただ、”エネルギー保存則”があるから分けたビームの一本々のエネルギーは下がってしまうが、元々の
”火炎直撃砲”のエネルギーは非常に大きいので五本程度に分割した位では充分な破壊力をまだ維持しているのだ。
e0266858_09292883.jpg
「でも、あのビーム転移砲をも大きく上回る射程を”ガウ・ルーガル”は実現しています、それはどう説明するのですか?」
今度は北野砲手が質問した。

「勉強熱心な君の事だ、落ち着いて考えてみたまえ、ヒントは”光速兵器の限界”だ。」真田副長は簡単に答えを与えて
くれなかった。

 強力で迅速、”撫で斬り効果”も期待出来る光速兵器であるが、その本質上、避けられない欠点を持つ、それは砲口を離れたビームは目標までの距離が増えれば増える程、その破壊力が減って行く事だ。
(距離の二乗に比例して破壊力が減るのは避けられないのだ。)
e0266858_10164105.jpg
反対に魚雷やミサイルは速度は遅いが推進剤の続く限りどこで爆発しても威力は同じである。

”火炎直撃砲”(地球人はこの名を知らなかったが・・・。)は破壊ビームを転送機で任意の場所に送り込む事で
通常の”光速兵器”の射程外から攻撃出来るのが長所だと思われて来た。

しかし、実は”火炎直撃砲”は単なる射程距離短縮砲では無く、真に多彩な用法がある兵器なのだ。

自艦から全く異なる方向から敵艦を狙う事も可能、一本の極太破壊ビームを複数の目標に対して別けて照射する事も可能だった。

<なる程、あの艦、”ガウ・ルーガル”には外から見える武装が殆ど無いのはこういう理由があったんだな。>真田副長は
前に遭遇したガトランティスの”ビーム転移砲艦”が凶悪に見える程、強武装だった事を思い出し、一見すると殆ど
”非武装”にしか見えない”ガウ・ルーガル”の強大な力を目の当たりにする事で”人の力”の大きさを改めて痛感した。


                                       181. やってきたのはお姫(ひい)様ー(9)→ この項・続く

[PR]
# by YAMATOSS992 | 2015-03-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
 「おおっ!動き出した!」第一艦橋に居た全員が喜びの声を上げた。

ヤマトが修理・資材を提供したガトランティスのレティファン・クエセジャード姫、”御召艦 ガウ・ルーガル” がゆっくりと
前進を始めたのだ。

「やれやれ、これでやっと解放されるな。 沖田艦長の容態も安定した、ヤマトはこの場を去る事が出来る!波動エンジン
始動!直ちに”転移(ワープ)”に入る!」真田副長が大幅に遅れた”定時転移(ワープ)”を命令した。

予め計算してあった定時転移(ワープ)を行うべく、ヤマトは準備に入った。

「波動エンジン始動! 室圧上昇!七十、八十、フライ・ホイール接続! 室圧 九十、百、エネルギー充填 百二十%、
航海長、何時でも”転移(ワープ)可能じゃ!」徳川機関長が準備完了を告げる。

その声を受けて島航海長はヤマトを”転移(ワープ)速度”へ加速させ様とした。
e0266858_20591634.jpg
<アレッ? 何時もより加速が鈍い・・・。 機関の異常か!>島は静かにスロットル・レバーを元に戻した。

「航海長! どうした!」真田副長が誰何した。

しかし、島航海長はそれには応えず、徳川機関長の注意を喚起した。

「徳川さん、ヤマトの加速が何時もより僅かですが、”鈍い”、このままでは”波動エンジン”に異常が出るやも
知れません!」

それを聞いた徳川機関長は機関室に連絡を取り、波動エンジンを停止、機関点検をさせた。

「ムゥ、エネルギー伝道管の一本に亀裂が入り懸かっておる、確かに航海長の言う通り、このまま運転し続ければ
”転移(ワープ)”中に急に機関が止まり大事故になる所だった。 
いや、流石、地球初の光速突破艦”ヤマト”の航海長だ、見事じゃな。」徳川機関長は若者の成長が嬉しかった。

反面、真田副長は頭が痛かった、経年劣化した”波動エンジンのエネルギー伝道管”の”番手”である。

エネルギー伝道管の予備はまだあったが、悪い事に先程ガトランティス艦の修理に供出した”番手”の在庫は尽きて
しまっていた。
e0266858_21012953.png
幸いエネルギー伝道管の材料である”コスモナイト90”はまだ十二分に持っていたので製作は可能だったが、これで
また定時転移(ワープ)が遅れる、そして御召艦”ガウ・ルーガル”には敵対勢力の追手が迫る危険が増していた。

一刻も早く”ガウ・ルーガル”にこの宙域から立ち去って貰う必要があるのだ。

真田副長は再度、”ガウ・ルーガル”のボ・ルドウ艦長に連絡を取りこの宙域からの退避を懇願した。

『なるほど、確かに危機が迫って居りますな。 貴艦が退避されない理由はお尋ねしますまい。 機関全速!
最大空間跳躍用意!」ボ・ルドウは艦長の顔で命令を発した。

『待てい!』 凛とした声がガウ・ルーガルの艦橋に響いた。

スクリーンに映ったその姿を見て真田副長は頭を抱えた、<あの”姫”はまた何か問題を起こすに違いない!>彼の心は不吉な予感に満たされた。

「姫! ”漢同志の話”に口を挿む事は成りませんと日頃からお話申し上げているはず、許しませんぞ!」ボ・ルドウは情け
容赦無く鉄拳を振るった。

しかし、”姫”はそれをスルリとかわすとボ・ルドウ、いやガトランティスにとってはとんでもない事を言い放った。

「あの船にはわらわと”真の名”を交わした者が居る、難儀しておるなら捨てては置けぬ!」 それを聞いたボ・ルドウを
始めとするガトランティス兵達はあんぐりと口を開け驚愕を隠せないでいた。

「御父上、御母上ですら知らぬ”真の名”を”姫”は幾ら恩義があるとは言え、”異星人”に与えてしまったのですか!」
ボ・ルドウ艦長いや、侍従長は血を吐く様な言葉で”姫”を追求した。

「”星の海を往く者の理からなした”交換”じゃ、何もやましい事は無い!」”姫”はヤマト航海長の使命が”故郷の復活”に
ある事を告げ、自分の使命が”ガトランティスの矯正”である事を語った。

「”姫”・・・貴女様は”使命の神託”を得られたのですね。 ありがたや。」ボ・ルドウは”姫”の前に跪くと両手を上に伸ばし
つつ、”姫”を丁重に拝んだ。

「な、何のまねじゃ、”爺”、わらわはそれ程大それた事をしようとは思わぬ!」ボ・ルドウの思わぬ対応に”姫”の方が
戸惑っていた。

「これは誰しも”大帝”を恐れ、口に出来なかった”ガトランティスの悲願”であります。」副長の”ヤ・ラルトウもボ・ルドウの
左脇に跪いて”姫”を両手で仰いだ。

副長に続きブリッジに居たクルーの全員も戸惑いながらも、同じ様に”姫”の前に跪いた。

**************************************************
e0266858_08003984.jpg
 <”使命の神託”? この言葉を聞くのは二度めだ・・・。 それも女王、スターシャ・イスカンダルが言っていた言葉、
ガミラス人の口から聞いた事が無かったから、イスカンダル特有の”信仰”だと思っていたが、ガトランティスでも
重視されている処を見ると汎宇宙的な”信仰”なのかもしれないな…。>真田は学求者らしい考察をしていた。
(注、”使命の神託”については 拙作・大長編「使命の神託」を参照して下さい。)

「航海長! レティファン姫の”真の名”を本当にお聞きになったのですか!」桐生美影が蒼ざめた顔で聞いた。

「ああ確かに交わした、彼女の”真の名”は」そこまで言いかけた島の口は新見情報長に依って手で塞がれた。

「駄目よ、ここで言っては・・・。”姫”の気持ちを踏みにじる事になる! 相手に”真の名”を明かす事の意味を良く
考えなさい!」文化人類学に明るい新見情報長は島の無知から来る無神経さに呆れた。


個人や物の”真の名”を知る、明かす、これは地球の古代人の”言霊信仰”に関係した重要な儀式である。

人が猿人でまだ言葉を持って居なかった時代にはまるで意味の無い事であったが、一度、言葉を持ち、それを使って
人同士が意志を伝えられる様に成ると”言葉”は神聖なものとして洋の東西を問わず”信仰”の対象になった。

何しろあるもの(者、物)が、如何に遠くにあろうとも、如何に昔のものでも、遠い未来であってもその存在を確実に示す
事の出来る”は言葉”は、それまで刹那にしか生きれなかった人々に”言葉を使う事”に依って時空さえ越える事が
出来る事を教えたのである。

そして人々は”言葉”を神聖な物として扱った、これが”言霊信仰”である。

しかし、反面、”自分の名前”を敵に知られるとどんな”呪い”や”心理操作”を受けるか判らないと言った”恐怖”も生まれ、
自分の”真の名”は隠して置き、対外的には”仮の名”を名乗ると言う風習が古代・地球では当たり前に行われていた。

勿論、時代が下るにつれ、”言霊信仰”は薄らいで行ったのであるが、今だ持ってその力は決して無くなってはいない。
(宮崎駿 監督「風立ちぬ」、『堀越二郎、菜穂子、婚儀の場』[追記]を参照)

ガトランティスのセジャード族にもこの風習がまだ受け継がれていた様である。

しかも、王家の所属者だけかもしれないが、”真の名”は”成人”した時、自分で決める物の様である。

自分の家来はおろか父母すら”姫”の”真の名”を知らない、そんな”神聖”な”名前”を明かすのは”生涯の伴侶”か、
”絶対信用出来る同盟者(親友?)”だけであった。

「航海長・・・。貴方は何者なのですか・・・?」驚愕の余り、桐生・美影は絞り出す様な声で島に問いかけた。

「転移(ワープ)反応、多数確認! ガトランティスの艦隊です!」岬・百合亜が次々と現れるガトランティスの艦影を捉え、報告した。
e0266858_08143559.jpg

<しまった! 間に合わなかったか!>真田副長は一戦交える覚悟を固めた。

                                       180. やってきたのはお姫(ひい)様ー(8)→ この項・続く

**************************************************

( 追記 )

ここからは”言霊信仰”が実在する事の証明文書です。

「ヤマト関連以外、要は無い!」と言われる方は読み飛ばして下さい。

表題 『”言霊”の威力について』

私は”言霊信仰”など”迷信”だと思って馬鹿にしていました。

今描いている物語でもガトランティスが”過去”を引きずっている事の象徴としての”言霊信仰”を扱い、その形として
”真の名”を使うつもりでした。

しかし、2015年2月20日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見て”言霊信仰”は決して”迷信”等では無く、現在も脈々と
生きている事を実感させられました。

それは堀越二郎と里美菜穂子の婚礼のシーンです。

婚儀は二郎の面倒を見てくれている黒川家の”離れ”で慌ただしく行われました。

婚礼用の飾りつけなど全く無い日常空間で堀越二郎と媒酌人(黒川氏)は普段着のまま、媒酌人(黒川夫人)と
里美菜穂子を待ちます。(二郎は外出着である”背広”黒川氏は”どてら”の上にチャンチャンコを着て正装っぽく
しています。)

家名の入った提灯を掲げ、家紋の入った羽織を羽織った媒酌人(黒川夫人)はゆっくりと二郎達が待つ”離れ”へと
晴れ着(これも羽織)を纏った菜穂子を連れて行きます。
e0266858_12294481.jpg
 媒酌人(黒川夫人)は新郎と介添人(黒川氏)の待つ部屋の正面でまず新婦の介添人が自分の前だけの障子を開け
口上を述べます。


新婦の介添人口上

「申す 七珍万宝投げ捨てて 身ひとつにて山を下りし みめうるわしき乙女なり いかーに。」

(申し上げます。 全財産を投げ捨ててまで山を下ってここに参った美しい乙女です。どうか嫁として
迎えてやって下さい。)


中にいる新郎の介添人が応えます。

新郎の介添人口上(返答)

「申す 雨露しのぐ屋根もなく 鈍感愚物のオノコなり それでもよければお入りください。」

(こちらも申し上げます。かの者も家も持たない鈍感でノロマな男です。それでも良ければ”嫁に”お入り下さい。)


新婦の介添人返答

「いざ 夫婦の契り 常しなえ。」

(これで結婚の儀、成立しました。 永遠の幸せを!)

提灯を折り畳み、灯りを吹き消し、障子を全部開けて、新郎の前に新婦をお披露目します。

(提灯の火を新郎側の口上が終わるまで消さないのは万一受け入れられない時は暗がりを新婦を連れて
引き返さなければならないからです。 また、受け入れられた後は新婦はもはやどこにも行かぬ証として提灯の火を
吹き消すのです。
それが成って初めて新婦のお披露目が為される訳です。)
e0266858_09541358.jpg
先にも書きましたがこの婚礼の儀は黒川家の”離れ”という日常空間で行われます。

しかも婚礼の儀に相応しい道具は媒酌用の酒器(盃と銚子)、提灯、後は花嫁衣裳位です。
e0266858_13004159.jpg
だがしかし、ここで媒酌人(黒川夫人)が提灯を灯したまま「申す!」と言った瞬間、”言霊”の力は登場人物達だけで
無く、我々観客さえをも、”神聖な異空間、婚礼の場”へ飛ばしてしまいました。

きちんと片付けられてはいましたが普段、生活する単なる部屋が新郎は外出着の”背広”とはいえ、普段着を
媒酌人(黒川氏)に至ってはどてらとチャンチャンコを羽織っているだけにも関わらず、です。

そう言えば私も結婚式に金を掛けるなど下らない、いっそ何もしないで良いと思っていましたが、義理の父母が結婚式に
拘ったので仕方なく式を挙げました。

しかし、実際に体験してみると結婚式(披露宴では無く、)の空間には確かには日常とは異なる全く別の物が
漂っている事がはっきりと判りました。

賛否両論渦巻く最後の”宮崎駿”監督作品、”風立ちぬ」ですが、まだ見ておられ無い方も先入観を捨てて一度、全編を
通して見る事をお勧めします。(他にも良い所がてんこ盛りです。)



[PR]
# by YAMATOSS992 | 2015-02-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
  真田副長がガトランティス艦へ派遣した修理班と連絡を取った所、修理が完了した旨の連絡が来た。

しかし、どうしても主機関の再起動が出来ないとの報告であった。

この事をボ・ルドウ侍従長、いやガトランティス戦艦”ガウ・ルーガル”艦長に伝えると再起動にはパス・ワードが必要な
場合があると言う事が判り、”姫”とボ・ルドウは自艦に引き返す事になったのだが、”姫”は『まだ、修理が終わった
訳では無い! ”証人”はまだ必要じゃ!』と自己の役割に拘った。

「判りました。”姫”の御覚悟しかと受け止めました。 私も貴艦の修理に立会いましょう。」押し問答をしていても時間の
無駄だと考えた真田副長はもう一機残されていた百式空間偵察機を使ってガトランティス艦に向かった。
(操縦は航空隊員が受け持ったが・・・。)

もちろん、ボ・ルドウも”姫”と共にヤマトに来艦した 時に使った”連絡艇”を使って戦艦”ガウ・ルーガルに戻って行った。
e0266858_17324412.jpg
真田副長とボ・ルドウ侍従長が出て行くとヤマト左舷展望室には”レティファン姫”と島航海長だけが残されていた。

島航海長はガトランティス艦を目指してヤマトから発艦してゆく二筋の光の帯を展望室の窓から見つめながら言った。

「私は卑怯者です。 何時だって”航海”の事だけを考え、ヤマトの安全な場所で舵を執って来た。・・・」島航海長は
突然、レティファン姫の思いもよらぬ事を言って来た。

怪訝な顔で沈黙する”姫”を余所に島は言葉を続けた。

「本来なら、貴女のお相手をするのは本艦・戦術長の役目です。 私の親友、古代・進の・・・。」島・大介はバラン星・
亜空間ゲートの銀河系・方面・亜空間回廊内で起こった戦闘により親友・古代の恋人が瀕死の重傷を負い、
冷凍睡眠カプセルで命を繋いでいる事を語った。

「良かったではないか? そちの親友の”恋人”とやらは死なずにすんだのであろう?」"姫”が怪訝な顔をした。
e0266858_20321671.jpg
「良くない! 瀕死の重傷を負ったんだぞ! 彼女は今も”生死の境”を彷徨っている・・・。」島航海長は悔しげに
拳を握った。

 古代・進は”恋人、森・雪”が何時、死んでもおかしくない中、戦術長の任務を続けた。
e0266858_20445324.jpg
そして、睡眠から目覚めると真っ先にする事は”彼女の生死”を確かめる事だった。

多分、睡眠中も眠りは浅く、悪夢にうなされる日々が続いた事であろう。

しかし、そんな無理は長く続けられるはずも無く、”森・雪”の負傷から三ヶ月たった所で古代戦術長はとうとう床から起き上がれなくなり、佐渡医師の判断で冷凍睡眠処置を受け、今は眠っている状態なのだ。

「そこまで想って貰える”恋人”とやらは”幸せ者”じゃな・・・。 わらわなど自分の運命から逃げてばかりじゃ・・・。」
”姫”は多くを語らなかったがその言葉に彼女が庶民には判らぬ苦労をして来た事を島・航海長は感じた。

「じゃが、そなた達の旅とその使命の話を聞いて決めた! 私の使命はガトランティスを父上から聞いていた本来の姿に
戻す事じゃ!」<ガトランティスの本来の姿? それはどう言うことだ?>島・航海長は”姫”の唐突な言葉に戸惑った。

ガトランティスは凶暴な戦闘民族である、群れを成して大艦隊で星系を襲い、その持てる資源や人材を根こそぎ奪って
行く存在としてガミラスからさえも恐れられていた。

しかし、レティファン姫が所属していたセジャード族が主導権を握っていた時代には母星を持たず、宇宙船を住処とし、
星の海を漂泊している点では今と変わらなかったが現在のガトランティスと大きく決定的に違う部分があった。

それはガトランティスの生計の立て方であった。

現在のガトランティスの生計は”略奪”に依って成り立っている。

しかし、過去は”星間・貿易”が生きる手段であった。

ある星系で仕入れた珍しい金品を他星系で物々交換して生きるのに必要な物資を手に入れると共に相手にも有用な
技術や文化・芸術といった形に成らない物も提供していたのである。

この為、アンドロメダ星雲ではガトランティスは各星系国家に歓迎され、寄港した際には大いに歓待されると言う今では
考えられない待遇を受けていたのだった。

だが、ガトランティスが豊穣な財産を保有している事が知れ渡るとそれを”武力”で奪い取ろうとする輩が生まれてくるのも
必然だった。 (”宙賊”の出現である。)
e0266858_08130037.png
そうなれば必然的にガトランティスの方も軍艦で輸送船団を護送する様になってくる、ガトランティス艦隊の艦船が
両舷同時戦闘を前提に設計され、また輪動砲を主に採用しているのもあらゆる方向から来る敵に即座に対応するため
である。
e0266858_08134086.jpg

また、艦隊には必ず空母を伴っているのも常時、広範囲な索敵警戒、及び初期迎撃をするのが目的」であった。
e0266858_09543579.png

だが、悲しいかな、波動防壁(ゲシュタム・フィールド)の様な純粋な防衛システムを持たなかったガトランティスは
攻撃力を強化する事で自らを防衛するしか無かった。

本来、侵略者の使う武器は見た目は高威力で恐ろし気だが実際の威力は少ないか、脅しだけで実戦には投入しない
場合が多い。

それは何故か? 侵略者はあまり高威力の兵器を使うと奪うべき戦利品までも失ってしまうので波動砲の様な
大量破壊兵器は使えないのだ。

反対に防御側は侵略者を兵士も船も纏めて排除してもなんら問題が無いので幾らでも高威力の大量破壊兵器が使えると言う皮肉な事になってしまっている。

だが、この理がガトランティスにとってはその運命を大きく作用する結果となった。

ガトランティスは自己防衛の為に武装したのであるからその武装は防御用の大量破壊兵器が中心であったが
アンドロメダ星雲の各星系国家は大量破壊兵器で武装したガトランティスに警戒感を抱き、ガトランティスは排除される
対象となってしまった。

そして補給をする必要上、止む無くではあったが、ガトランティスは各星域で略奪行為を働く様になってしまったのだ。

こうなれば後は坂道を転がり落ちる如く”略奪・国家”に成り下がるしか無かったガトランティスであった。

”レティファン姫”はそれを正し、ガトランティスを真面な”星間貿易国家”に戻す様、導くと言っているのだ。

「姫様、恐れ多き事ですがそれは無理です。 ”姫”、御一人が幾ら頑張っても体制までは変えられない。」生真面目な
島航海長は”姫”の無謀なはかりごとを諌めた。

「何を申す! そなた達だってあのガミラスに滅亡の瀬戸際まで追い詰められながらもイスカンダルといったか?その地で救済の手段を手にし、帰還の途にあるのではないか?」

確かにヤマトの航海は奇跡の連続だった、そして、その”不可能”を”可能”にして来たのは常にヤマト乗組員全体の人の
力だった事を島航海長は思い出していた。

「”生まれた星は違っても想う所が同じならきっと心は通じる!” わらわは”爺”にそう教えられて育った・・・。」”姫”は
どこか遠くを見つめる様な目になった。

「そうじゃ、そなた達の旅はまだ終わってはおらん、私の”企て”も始まったばかりじゃ、互いの成功を約してお互い、
”真の名”を交換いたそう。 どうじゃ、異論はあるまい!」”姫”は再び島を当惑させる様な事を言い出した。

<”真の名”? 何の事だ?>文化人類学の知識など無い島航海長は当惑するばかりだった。 

                                       179. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(7)→ この項・続く

[PR]
# by YAMATOSS992 | 2015-02-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(10)
  一行が応接室に入り、着席すると間の悪い沈黙が二組の間に流れた。

「ところで、何で貴艦の最高責任者である貴方がたが”証人”として本艦にやって来られたのです?」島航海長が沈黙に
耐え切れず口を開いた。

「航海長!」真田副長の叱責が飛んだ。

「島殿、異星人は珍しいですかな?」ボ・ルドウが微笑しつつ、聞いた。

「えっ、それは・・・。」島が応えかけるのを制する様に真田副長が発言した。

「いえ、貴方がたとは一度、接触しています。 また、ガミラス、イスカンダルとも接触しています。 航海長が驚いたのは
貴艦に送り出した修理・調査隊の”安全”を保障する為に本艦に送られた”証人”が貴艦の最高責任者である貴方がた
だった事です。『人の命は平等なのですから士官の方であればそれで良かったのでは?』と彼は考えたのです。」
真田はガトランティスの貴人に対する非礼を極度に恐れていた。

ここで紛争が起きればヤマト本体は何とか切り抜けられるだろうが、沖田艦長の容態を悪化させる恐れがあったからだ。

「『人の命は平等・・・。』我等には考え及ばぬ事ですわい。 ”姫と儂”が”証人”としてまいったのは出来うる限り
高位の者を”証人”として立てる事で貴艦の好意に報いようとしたまでの事、他意はありませぬ。」ボ・ルドウは
ガトランティスが階級社会である事を暗に明かしてしまった。

姫が目の前に出された”紅茶”を興味深げに見遣り、手に取って一口、啜ったが渋かったのであろう複雑な表情をした。

「失礼します。」それを見た島航海長は姫の傍らまで行くと跪き、姫の紅茶に付属のレモンを浮かべ、砂糖を適量入れるとそれを薦めた。

「これで美味しくなったと存じます。姫様、お試しあれ。」
e0266858_06544406.jpg
島に薦められるまま、姫は恐る々その紅茶を口にした。

一口啜った姫の目が大きく開かれた。

「こんな美味しい物、口にした事無いぞ! 試して御覧、爺。」姫はボ・ルドウにも紅茶を薦めた。

「これは・・・。我が部族には無い味ですわい、我等は”証人”、これ程の持成しを受ける資格などありはしませぬ。」
”証人”とは砕けて言えば”人質”の事である、ボ・ルドウは自艦の修理を他勢力の艦の力を借りねばならぬ事を深く
恥じているのだ。

<技術力が不足している?のか・・・。 ではあのビーム転送兵器はどうやって作ったのだ?>真田はガトランティス艦の
技術の偏り方が気になった。

「そうお気遣いなさらずに。この飲み物、”紅茶”と申しますが、これは本艦の一般の乗組員でも自由に飲む事の
出来る物です。別にあなた方を特別扱いしている訳ではありません。」島航海長がすかさず説明した。

「これ程の”享楽”を与えても一般兵士の”規律”が保たれるとは貴艦の艦長の”人心掌握力”は恐るべき強大さですな。」
ボ・ルドウは手にした紅茶のカップを目の高さに掲げつつ、感慨深げな言葉を漏らした。

「爺、つまらない!ここは星が見えない!わらわは母なる星の海を見て居たい。」姫がまた我儘を言った。

「姫!我等は”証人”、迂闊に動き回る事など許されませんぞ!我慢なされよ!」ボ・ルドウが姫を叱責した。

「まぁまぁ、ボ・ルドウさん、修理はまだ時間が掛かる事でしょう。 姫様が退屈されるのも無理はない。場所を
変えましょう。真田副長、展望室など如何でしょうか?」島航海長が提案した。

<確かに左舷展望室ならガトランティス艦も真近に見えるし、機密に触れる物も何も無い。反対する理由は無いな。>
真田副長は島の進言を入れて一行を左舷展望室に案内した。

「オオ、見事な!そなた達はあそこに向かって航海するのじゃな。」姫が真近に迫った光の海、銀河系を見て感嘆した。

「はぁ、ですが我が故郷”地球”はガミラスの手に依って”瀕死”の状態です。 我等はイスカンダルが差し伸べてくれた
”救済”を求めて”旅”をし、その”救済”をイスカンダルから受け取って帰還の途にある状況なのです。」島航海長が
ヤマトの置かれている状況について説明した。

真田副長は島航海長の説明を遣り過ぎだと思いつつ眉をしかめた。

「そちらが”旅”の事情を明かして下さったのなら、こちらも事情説明をせねばなりますまい。」ボ・ルドウ侍従長が”姫”の
逃避行の訳を説明し始めた。

”レティファン姫”はガトランティスの古き部族、セジャード族の王女である。

そしてセジャード族は一時は全ガトランティスを束ねる程の強力な部族であった。

しかし、小マゼラン雲への侵攻に仲々成功出来ないでいる内に新興勢力が台頭しセジャード族はガトランティスの
支配権を新興勢力に奪われ、大きく弱体化してしまったのだった。

台頭して来た新興勢力は一つでは無く、幾つかあった為、彼等は権力闘争に明け暮れており、仲々纏まる事は
無かった。

しかし、やがて幾つかの部族を統合する事に成功した一派が全ガトランティスの全権力を掌握し、部族連合だった
ガトランティスに独裁体制を敷く事に成功したのだ。

その支配者の名は”ズォーダー”、自ら”大帝”を名乗り、圧倒的な支配力を”恐怖”に依って実現した恐ろしい男だった。

だが、彼は民衆や兵士の前に姿を現す事は無く、その施策は全て丞相のシファ・サーベラーを通して官僚や軍・指令官、
一般兵士に伝えられた。
(訂正 シファ・サーベラー → シファル・サーベラーでした。HAL0999さん御指摘有難うございました。)
e0266858_19060774.jpg
一応、部族の連合体だったガトランティスを一枚岩に統合する事に成功した”ズォーダー”だったが、宇宙を漂泊する
集団であるガトランティスの本質は変えようが無く、旧部族毎の集団で艦隊を組む事を許さざるを得なかった。

この為、”大帝”は各部族に族長の娘を”側室”として差し出す様に要求して来た。

「婚礼の旅とは”政略結婚”の為だったのですね。」真田副長が痛ましそうに”姫”を見やった。

「そうじゃ、じゃが同情は無用じゃ、我等は彼奴らの迎えの艦隊を全滅させ、最大空間跳躍を行って追手をまいたところ
じゃ。」姫が星の海から顔を上げ、悪戯っぽく微笑んだ。

「しかし、”側室”とはいえ”大帝の家族”となるのでしょう? 御父上が束ねる部族の為にも”姫”はお輿入れすべきだった
のではありませんか?」島航海長が余計な事を言った。

「判っておらぬな。 ガトランティスを構成する部族は千近くあるのじゃ。 今頃、輿入れした所で”大帝”の顔を拝む事も
無く、武功のあった武将に”下賜”されるのが落ちじゃ。」”姫”は絶望的な事を言った。

「どうしてそうだと決めつけるんです! それだけ大きな集団を束ねる”漢”でしょ、人間的魅力がある”人”なのでは?」
島航海長は”姫”に平和な暮らしをして欲しかっただけだった。

「それはありませぬ。 なぜなら”姫様”の御母上は御父上、グエゼ・クエセジャード様の下に”大帝”が”下賜”する形で
嫁いで来られた方じゃった。
その上、”姫”を生んだ後の産後の肥立ちが悪く早くに亡くなったのじゃが最後まで”大帝”の扱いを恨んで居られた。
ですからシファル・サーベラーからこの輿入れの話があった時、御父上、グエゼ・クエセジャード様は形だけ”大帝”の命に
従い、裏で私に”姫”の逃亡を助ける様に命じられたのじゃ。」ボ・ルドウは衝撃的な事実を告げた。

<これは早く彼等と別れねば確実にヤマトは戦火に巻き込まれるぞ!>真田副長はそっと席を外すとガトランティス艦・修理・遠征部隊に連絡を取った。


                                        178. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(6)→ この項・続く

[PR]
# by YAMATOSS992 | 2015-02-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
 ガトランティス艦から来た連絡艇はヤマトの左舷第三格納庫に誘導され、ガトランティスの使節は格納庫内が加圧され
たのを確認したらしく、ヤマト側が誘導しなくても姿を現した。

しかし、その姿を格納庫の観測室で見た真田副長は目を剥いた。

遣って来たのがボ・ルドウ侍従長であったのも驚きだったが、彼にはもう一人、”連れ” があった。

先程、画像通信でメイン・パネルに映っていた正統ガトランティス王家第二王女レティファン・クエセジャード、その人が
ヤマトを訪問して来たのである。

王家の人間を迎えるとなればそれなりの儀礼を整えなければならない、副長は取り敢えず四人の保安部員を呼び寄せ
儀仗兵の役割を果たさせる事を考えたが文化風習の違いを考えるとやたら武器をチラつかせる地球式の儀礼は返って
相手を刺激する事に成りかねないと考えを改めた。
e0266858_17254217.jpg
「ブリッジ、聞こえるか? 島航海長、悪いが第三格納庫まで足を運んでくれ。但し、貴人を迎えるので正装で頼む。」
真田副長は一方的に要件を伝えるとインカムを切り、自分も着替える為に自室に走った。

<貴人って誰の事だろう?>真田副長に命じられた正装を整えながら島航海長は首を傾げた。

<あのガトランティス艦は『御召艦』だと言っていたっけ、姫と侍従長の他にも高官が乗って居ても不思議は無いな。>

島航海長はまだ事態を軽く考えていた。

**************************************************

「”迎え”はまだか! 我はレティファン・クエセジャード、正統ガトランティス王家、第二王女なるぞ!」気が短い”姫”が
切れた。

「申し訳けありません。もう間も無く責任者が参りますので今しばらくの御辛抱をお願いします。」保安部長代理の
星名・透が異星の客(?、”姫君”)をなだめるのに必死になっていた。

<クッ、これがヤマトの外なら指向性翻訳機構が働かないから言葉が判らない振りも出来るのに・・・。>星名・保安部長
代理は心の中で毒づいたが顔は笑顔を絶やさなかった。

指向性翻訳機構とは桐生・美影が学生時代から研究してきた言語相互翻訳装置の事である。

彼女の母が集めた地球各地、各時代の言語をベースに相互翻訳をタイム・ラグ無しに行うものであったがその場に居る
全員に聞こえる様に音量を上げると会話が騒音の渦になって仕舞うので音波に指向性を持たせ、聞かせるべき相手に
だけ言葉が届く様、真田技師長の助けを借りて改良していた。

更に彼女はイスカンダル滞在中、ガミラス・イスカンダル両星でのフィールド・ワークを行い膨大な量のデータを入手していた。
e0266858_19154207.jpg
その中にはガトランティスの言語データも含まれていたので前回と今回、殆ど顔も合わせた事の無い種族同士でも意志
疎通が可能となっていた。

どうしてイスカンダルに居ながらにしてフィールド・ワークが可能だったかと言うとこれは桐生・美影のスターシャに対する
積極的アプローチに尽きる。

最初は地球人の”野蛮さ”を警戒していた女王、スターシャであったが、彼女も分野こそ違えやはり研究者であった。

結局は桐生・美影の言語学・人類学に対する熱意に負け、復興に忙しいガミラスの植民地管理を行っている統制省に
掛け合って言語データの譲渡を頼んでくれた。

これが広いガミラスの版図に散らばった多数の星と民族の言語と文化を入手する事を可能にし、前回、今回と
ガトランティスと意志疎通を果たせたのもこの時のフィールド・ワークの賜物だった。

<桐生・美影・・・さんか。 今頃、あっちで上手く出来ているのかしら。>星名に付き添って来た和田保安部員は今は
閉まっているシャッターの方を、そしてガトランティス艦の方を見やった。

「お待たせしました、支度に手間取りましてお迎えが遅れて申し訳けありません。」真田副長が島航海長を連れて”客”を
迎えに来た。

「私は本艦の副長、真田です。彼は航海長の島・大介、艦長は只今不在にしており、ここに来れない事をお詫び申し上げ
ます。さ、さ、立ち話では無く寛いで頂く為に部屋を用意しました。 そちらにお移り願います。」真田は姫とその侍従長を
ヤマトの艦内にある応接室へと案内した。
e0266858_19330888.jpg
**************************************************

「全くもう、ヤマトにあった”予備のエネルギー伝道管”を殆ど全部持ち出す事に為っちゃいましたよ!」岩田・甲板員が
コンテナに物を積み込みながらぼやいた。

「大丈夫だ。木星・浮遊大陸の波動砲使用によるトラブル以外、”伝道管”関係のトラブルは出ていない。 
幸い、コスモナイトの鉱石はまだ残っている。後は航海しながら予備を再度作り直せば良いと思うよ。」コンテナの
積み込み作業を手伝っていた吉田・充機関員が楽観的な見方をしてみせた。

「積み込み完了!”コウノトリ”にコンテナを接続しろ!」榎本掌帆長が命令した。

本来、”コウノトリ”ことキ8型試作宙艇は輸送機ではない、しかし、元々、輸送任務を担うべき空間汎用輸送機SC97
<コスモ・シーガル>をヤマトは二機搭載していたが、ガミラスとの戦闘で二機とも失われてしまっていた。

この為、惑星探査艇であるキ8型試作宙艇に無理やりコンテナを取り付けて輸送機として使おうと言うのだ。

<かなり無理やり感が強いが、まっ重力圏内に降りる訳ではないから大丈夫だろう。>”コウノトリ”とコンテナの接続作業を見守りながら榎本掌帆長は思った。

やがて”コウノトリ”はその汎用性をフルに発揮して大型のコンテナを機体の下に抱え込むとガトランティス艦に向かって飛び立っていった。
e0266858_07251457.jpg

                                        177. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(5)→ この項・続く
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2015-02-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)