62, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(5)
1,戦闘機 (1974年版「ヤマト」 「七色星団の攻防」に登場)
(「ヤマト2199」 「七色星団の攻防」に登場)
1974年版「ヤマト」でも「ヤマト2199」でも第一次攻撃隊として囮となって「ヤマト」から護衛の艦載機を引き離す役目を演じ、その役目を十二分に果たした。
但し、ドメルは攻撃の本命である第二次、三次の攻撃に「物質転送機」を使う計画だったのでそれを「ヤマト」に
悟られないためか、この第一次攻撃隊の展開には「物質転送機」を使ってはいない。
縮退星で構成され、イオン乱流が荒れ狂う「七色星団」の宙域では不慣れな若年兵と経験は豊富だが身体が
付いて行かなくなった老兵で構成されたドメル艦隊は古くから行われていた航宙戦での戦闘距離を採用せざる
を得ず、後に多層式航母艦を「ヤマト」の主砲の射程距離まで接近させてしまい、撃破されるという失態を
演じた。
第一次攻撃隊も自力で「ヤマト」に接近するのではなく、「物質転送機」を使って「ヤマト」が気付かない位、少し
離れた所へ「転送」してやれば、旧式で脆弱な多層航宙母艦の艦隊も「ヤマト」の主砲の射程圏外に置く事が
出来き、安全に作戦を進める事が出来たのではないだろうか?
これはドメル将軍自身が「第四次攻撃隊も機動部隊(の雷撃機?)を使用すべきだった。
砲戦で決着を付け様としたのは『吾身の驕り』だった。」として自らの判断の甘さを認めている。
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さて、それではこの戦闘機をハード・ウエアとして少し細かく見てみたい。
1974年版「ヤマト」に登場した戦闘機と「ヤマト2199」に登場した空間艦上戦闘機DWG109(デバッケ)は
そのシルエットは非常に良く似ている。
が、しかし、重量感やボリュームは1974年版「ヤマト」に登場した物の方がずっと重厚であった。
これは空間艦上戦闘機DWG109(デバッケ)はガイペロン級多層式航宙母艦専用に設計されたものだからだと
考えられる。
ガイペロン級多層式航宙母艦はその搭載機を三層に分かれた飛行甲板の最下層と中層の甲板に露天継止
している。 (中甲板と最下層甲板では露天継止というよりは開放式格納庫になっていると考えるべきか?)
このため、艦載機の全幅は極力、少ない方が艦載機は搭載機数を増やせる。
従って、空間艦上戦闘機DWG109(デバッケ)はまるで矢尻の様に細長い姿となった。
同じ艦上機でも別に登場する空間格闘戦闘機DWG262(ツヴァルケ)とは好対照な姿である。(後記)
ただ、空間艦上戦闘機DWG109デバッケが大気圏外での戦闘のみを考えていたのだとすれば対空ミサイルの
搭載量が少し少な目なだけでその戦闘能力は決して少なくなかったのは「ヤマト」のファルコン隊との戦闘を
見れば明らかである。
固定武装が機首に7.9mm機銃 2 門、主翼根本に13mm機銃 6 門と口径は少ないものの、戦闘機としは
充分な武装を持っている。
加えて空対空ミサイルを両翼に2基づつ懸河し、計4基のミサイルを運用出来るのも充分な性能だ。
しかし、地球流に言えば、対航空機戦に特化し過ぎていて対艦戦などに使えず、融通性に欠ける点は欠点と
して数えるべきかもしれない。
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2. 爆撃機
急降下爆撃機 (1974年版「ヤマト」 「七色星団の攻防」に登場)
1974年版「ヤマト」でドメル将軍が第二波攻撃に使用した急降下爆撃機である。
「瞬間物質移送機」で「ヤマト」直上に送り込まれ、バーガー少佐の指揮の元、「ヤマト」のレーダーや測距を
破壊して「ヤマト」の探知能力を大幅に低下させる事に成功した。
しかし、宇宙空間で急降下爆撃とは異な物だ。
確かに慣性は働くから目標に向かって突撃して衝突直前に爆弾を切り離して機体の方は引き起こして衝突を
避ける事は可能だ。
だが、現実にはそんな原始的な攻撃方法は取られない。
1974年版「ヤマト」世界にもミサイルが存在する以上、本来なら対艦ミサイルを使用するはずである。
それをせず、敢えて急降下爆撃機を使用したのは前記した1974年版「ヤマト」はSFではなく、第二次大戦の
パロディを行っているのだと言う製作者側の一部の人達の意志表明だったと私は考える。
攻撃機 (「ヤマト2199」 「七色星団の攻防」に登場)
こちらは「ヤマト2199」で使用された攻撃機である。
これは元々、大気や重力のある所で使用する事を前提に設計された急降下爆撃機である。
それをドメル将軍は「ヤマト」の「目と耳」を奪う奇襲部隊の使用機として選んだ。
いくら「物質転送機」があるとはいえ、いきなり、空間重爆撃機や空間雷撃機を「ヤマト」近傍に送り込むと
それらの鈍重な機体は「ヤマト」の対空砲火に捕まり、撃墜されてしまう恐れがあったからである。
軽快な小型機である空間艦上攻撃機DMB87「スヌーカ」なら「物質転送機」による奇襲と合わせて「ヤマト」の
猛烈なパルス・レーザー砲の弾幕をかいくぐり、「ヤマト」の対空砲火を指揮するレーダー・や測距儀、対空射撃
指揮装置を破壊する事が出来たのである。
その打撃力は中型対艦ミサイル2発と小型対艦ミサイル6発と少な目ではあったが、目的から考えれば充分な
威力だった。
ドメル艦隊の切り込み隊長、フォムト・バーガー少佐はガイペロン級多層式航宙母艦「ランベア」から発進し、
「ヤマト」に与えた物理的損害こそ大きくなかったものの、「ヤマト」の「目と耳を奪う」と言う目的は見事果たし、
その後の戦局をドメル艦隊有利に向ける事に成功した。
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3.雷撃機
雷撃機 (1974年版「ヤマト」 「七色星団の攻防」に登場)
この雷撃機は今までのドメル艦隊の「戦闘機」「急降下爆撃機」と言った、現実にあった機体をモディファイした
ものではなく、宇宙空間で使用するに相応しい内容を持った設定で当時、大学生であり、軍事マニアであった
私も「これはやられた!」と兜を脱いだ覚えがある。
機首が魚雷になっている兵器は小澤さとる氏の「青の6号」の「青」本局の警備・戦闘艇「シャーク1」等、既に
他のクリエーター達も同様な物を発表していた。
しかし、このドメル艦隊の雷撃機は大型魚雷を機首だけでなく、後部にもタンデム方式に装備していたので
ある。
「『ヤマト』はSFじゃない!」と声高に叫んでいる人達自身がこれだけセンス・オブ・ワンダーに富んだ設定を
する・・・。
「センス・オブ・ワンダー」こそSFの魂そのものだと思い知らされた気がした。
やはり、1974年版「ヤマト」はそれ自身、第二次大戦物のパロディと化そうともその存在意義は日本SF界の
金字塔として今も燦然と輝き続けていている。
だからこそ、2012年になってリメイクが行われ「宇宙戦艦『ヤマト』2199」として新たな命が吹き込まれた。
では、その「ヤマト2199」版の雷撃機はその設定や位置づけがどう変わったのであろうか、次は「ヤマ2199」の
空間雷撃機FWG97「ドルシーラ」について語ってみたい。
設定内容的には1974年版「ヤマト」に登場する雷撃機よりも雷装が一本減り、常識的な内容の機体になって
いる。
しかも、その位置づけはかつては航宙母艦で構成された機動部隊の主力であったが、対艦ミサイルの高性能化に
よって旧式化し、今は辺境宙域で運用される旧式兵器であるという1974年版「ヤマト」の時と比べるとずいぶん
落ちぶれた存在に変わってしまった。
さらに艦載機としては大型なので動きが鈍重で簡単に「ヤマト」側の戦闘機の餌食になってしまった。
だが、この空間雷撃機FWG97「ドルシーラ」の凋落ぶりにガミラスの航空宇宙兵力に関する大きな変革が見て
とれるのである。
次回はガミラスの航空宇宙戦略の変化について語ってみたい。
63, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(6)→この項続く