人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)

 『皇室・ヨット』としての性質上、外見上、武装は最小限度に抑えていたが、 『皇室・巡航・戦艦』・『アヲスイショウⅡ
(ア・ルー)』 として活動している今、その武装は全周位に渡って並みの 『戦艦』など恐れるに足らない程の威力を発揮
出来る状態になっていたのだが、ドメル・艦長は敢えて相手を油断させるため、退避行動に入った。

しかも『皇室・ヨット』の速度はわざと抑えられていたので彼我の距離はみるみる縮まった。

『ゼルグート』級超弩級戦艦はその大火力、490mm四連装陽電子ビーム砲塔三基、十二条のビームが『皇室・ヨット』の
上下左右を擦過した、威嚇射撃だった。
124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)_e0266858_17505570.jpg

それでも 『皇室・巡航・戦艦』の艦橋は大きく揺さぶられた。

直後に敵・超弩級戦艦から通信が来た、連絡して来たのは、ダール・ヒステンバーガー、ガミラス帝星大本営作戦部長
だった。

「高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)第三皇女、ユリーシャ様、ご無事を御喜び申し上げます。 
ですが、もう限界です。降伏する事をおすすめ致します。」言葉は丁寧だったが、その内容は降伏勧告だった。

「ヒステンバーガー、貴方は 『ガミラス皇室』・初代女皇・ユリーシャ・ガミロニア様に恐れ多くも 『降伏』しろと言うつもり
ですか!」ドメル・艦長が鋭く強断した。

「ガミラスに 『皇室』 など存在してはならない、イスカンダルの方を敬うのはやぶさかではないが、 『デスラー総統』の
代わりに イスカンダルの方が開いた『皇室』 に従う事など断じて出来ん! これはガミラス独自の問題である!」
ヒステンバーガーは愚直な将軍だった。

「そう言う事なら仕方ありませんね。 私がお相手します。」ドメル・艦長が宣言した。

「おお、そのお顔はドメル・夫人、それでは先ほどの指揮は貴女が! これは面白くなって来た、存分に戦われよ!」
ヒステンバーガーはそれだけ言うと通信を断った。

<ダール・ヒステンバーガーか、ガミラス帝星大本営作戦部長・・・。 旧貴族制度の復活を唱える一派の大物だわ。 
しかし、彼に 『女皇』 暗殺を計画出来る度量は無い・・・。 もし、彼が首謀者だったら今、決して名乗り出る様な真似は
しない・・・。>ユリーシャは次の一手を考えていた、今はドメル・艦長に任せておいて大丈夫との確信があったからだ。

『ゼルグート』級超弩級戦艦はその大火力、490mm四連装陽電子ビーム砲塔三基、十二条のビームが『皇室・ヨット』を
直撃した。

しかし、通常の 『ハイゼラード』 級戦艦には無い、元の 『シャングリ・ラー』 でも一基しか備えていなかった、ゲシュタム・
フィールド(波動防壁)発生装置を三基も備えていた『皇室・ヨット』 は艦体をビリビリ震わせはしたものの、攻撃を完全に
受け流した。

「駄目です! こちらの攻撃は完全に無効化されています!」艦長は唯でさえ、高貴なるイスカンダルを攻撃する事に
躊躇いがあったから、『ゼルグート』級超弩級戦艦の大火力が利かないと判るとたちまち浮足立った。

今度は 『皇室・ヨット』が撃ち返して来た。 後部にある四基の副砲に延長砲身を取り付けてビーム砲では無く、ビーム・
カノン砲として威力を増していた。

しかし、いくらビーム・カノン砲として威力を増していたといっても、所詮、280mm口径の副砲では『ゼルグート』級超弩級
戦艦の正面装甲を破る事は出来なかった。
124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)_e0266858_13354754.jpg

<こんな、豆鉄砲が利くものか!>ヒステンバーガーはニヤリとすると、配下の 『ハイゼラード級』 戦艦・戦隊を
呼び寄せようとした。

しかし、配下の二隻の 『ハイゼラード級』 戦艦は主砲塔群と上部魚雷発射管群を使用不能にされ、動けば下部魚雷
発射管群やゲシュタム機関に魚雷を撃ちこむと脅され、その場を動けない状態にされていた。

こちらからは見えない次元断層から常に見張られ、いつ攻撃を受けるか解らない、そんな状況の内、
二隻の 『ハイゼラード級』 戦艦は完全に戦意を喪失していた。

<クソッ、『猟犬』 が一緒にいたのか・・・。 『皇室・ヨット』なのに護衛がないのはおかしいと思った、ガル・ディッツ提督、
喰えない男だ・・・。>ヒステンバーガーは自分達が罠にはまったのではないかと考え初めていた。

**************************************************

「しかし、私はまだ負けた訳ではない! この『バル・ガル』の大質量で押し潰してくれるわ! 幸い、敵は停止している、
良い目標だ!」ヒステンバーガーは衝角戦を挑もうとした。

しかし、これこそ、ドメル・艦長以下、『皇室・巡航・戦艦』 の張った罠だった。

「敵は 『罠』 に落ちたわ! 副砲発射!」ドメル・艦長は余計な支持は出さなかった、ベテラン宙雷員達、エリート揃いの
『光の花園』 操作員達を信じていたからだ。

四基の副砲塔からそれぞれ二条づつの陽電子ビームが四方に放たれたが、そのビームは 『バル・ガル』 を狙っていな
かった。

「何をやっている、ヘタクソめ! あっ」艦長は目の前で起こっている事が信じられない様だった。

陽電子ビーム・カノン砲から発射された強力な陽電子ビームは反射板・誘導弾によってその射線を約百二十度位、
曲げられ、更にもう一度、その射線を曲げられた陽電子ビームはドメル・艦長の指摘した 『ゼルグート』級戦艦の弱点が
ある後部甲板に次々と突き刺さっていった。
124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)_e0266858_10494557.jpg

しかし、下部から弱点を狙った二条のビームは装甲に阻まれ、虚しく拡散した。

上部から最後尾の砲塔付近を狙った二条のビームの内、一条は砲塔に当たってしまい、やはり弾かれてしまった。

だが、残る一条は目的の装甲の弱い部分を直撃・貫通する事が出来た、これで六基あるゲシュタム機関の内、一つでも
機能を失わせれれば敵艦は戦闘不能になるはずだった。

しかし、突撃を敢行する 『バル・ガル』 の勢いは止まらなかった。

陽電子ビーム・カノン砲を 『光の花園』 に用いるためには、反射板・誘導弾を新たに展開しなおさなければならない。

カノン砲の強力な陽電子ビームを反射・誘導するのは一回が限度だったからである、始めの攻撃に使用した反射板・
誘導弾は既にスクラップになっていた。

だが、もはや新たに 『光の花園』 を展開している時間はないと判断したドメル・艦長は命令した。

「対艦用大型魚雷を連射せよ! 目標 敵超弩級戦艦の前面装甲中央! 弾のつづく限り撃ちまくれ!」

その命令を聞いた宙雷要員達は驚いた。

まさか、あのドメル・船長があからさまな戦闘司令を発するとは思っていなかったからだ。

だが、「『毒を以て毒を制す!』 か、艦長らしい御判断です。」宙雷士官は命令を復唱すると部下達に連射を命じた。

『バル・ガル』 は 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』が放った対艦用大型魚雷を主砲・副砲を総動員して迎撃した。

しかし、 『皇室・巡航・戦艦』に乗り組んだ老獪な宙雷要員達は秘儀を駆使して迎撃・ビームを潜り抜け、正面装甲の中央に次々と大型魚雷を命中させた。

<舐めやがって! 何でよりにもよって一番装甲の厚い場所に魚雷を集中して来るんだ、この装甲を破れると本当に思っているのか、ドメル夫人!>ヒステンバーガーはドメル・艦長を素人だと侮り、決定的なミスを犯した。

見ると副砲の射界に一本の魚雷が入って来た、しかしその副砲は沈黙したままだった。

「駄目です! 砲に廻せるエネルギーが足りません! 先ほどゲシュタム機関に受けた損害が広がり続けているものと
思われます。」砲術士官が絶望的な報告をした。

さっさと一度撤退し、ゲシュタム機関を修理してから、再度、『皇室・ヨット』 を襲えば良かったのに 『かすり傷』 だと侮って戦闘を続行したのがヒステンバーガーの読みの甘さだった。

見れば頼りの前面装甲板もグシャグシャに変形しており、貫通されるのは時間の問題だった。

「ゲシュタム・ジャンプはまだ出来るか・・・。」無駄と知りつつ、ヒステンバーガーは艦長に聞いた。

「閣下、砲撃も出来ない以上、残念ですが、それ以上にエネルギーを使う、ゲシュタム・ジャンプはとても出来ません。」
艦長は冷徹な言葉を返すしかなかった。

「そうか・・・。 私が自室に入ったら、この艦隊を降伏させてくれ、エル・ハンノガル艦長、今まで、良く私を支えてくれた。
有難う。」ヒステンバーガーは別れの言葉を告げた。

「駄目よ! 貴方は死んでは駄目! まだまだやって欲しい事があるの! ヒステンバーガー殿」見れば艦橋の中央に
一人の女が立っていた。

身体の輪郭が光っていたのでこれが立体映像なのは明らかだった。
124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)_e0266858_14232144.jpg

「私はイスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル。」その名を聞いた艦橋に居た者すべてが膝を着いて礼をした。

「そして、ガミラス帝星・皇室・初代女皇・ユリーシャ・ガミロニアでもあるわ。」

ヒステンバーガーの顔が屈辱に歪んだ。 

「私はイスカンダルの方を敬うのは当然だと思います、しかし、総統・デスラーが去った後の支配者を我々貴族の中から
選ぶ事をせず、イスカンダルの方が支配権を握るなどとても承認出来る事ではありません!」ヒステンバーガーは何故、
自分が、ユリーシャ暗殺に加担したのか、しゃべってしまったが、ユリーシャは気が付かないふりをしていた。

「私はガミラスの 『支配権』 を握ろうなんて思ってないわよ。」ユリーシャはとてつもない事を言った。

「はぁ、じゃなんで 『皇室』 を開いたりしたんですか? ガミラスの 『支配権』 を握り、思うがままに振舞うためでは
無かったのですか?」ヒステンバーガーは混乱していた。

「私のモットーは『君臨すれども統治(支配)せず。』 よ。 『支配権』を握れば政治・経済・教育・・・ありとあらゆる問題を
一人でしょい込む事になる・・・。

そんなのメンドクサイじゃない!」ユリーシャも負けじと本音を言ってしまった。



                                  125.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(12)→ この項、続く
by YAMATOSS992 | 2014-02-15 21:00 | ヤマト2199 挿話

by YAMATOSS992